研究概要 |
我々は、既にα-クロロシクロプロパンカルボン酸エステルのサマリウム (II) ヨージドによる Reformatsky 型反応、およびClaisen縮合型反応を報告している。α-ブロモシクロプロパンカルボン酸エステルの場合には、サマリウム (II) ヨージドよりも Zn の方が収率良くReformatsky 反応が進行する (61-96%, trans-add/cis-add > 99/1) ことを見い出した。また、シクロプロパンカルボン酸エステルのZn-エノラートとArI の 高選択的カップリング反応が進行することも見い出した。また、1-アリール-1,2-ジヒドロナフタレン化合物の中でポドフィリックアルデヒドは強力な生物活性を有することが知られている。一方、我々はシクロプロパンの環拡大反応によるジヒドロナフタレン合成を報告している (Chem. Lett. 2010, 39, 194.) 。そこで、この環拡大反応を鍵反応として、ジヒドロナフタレン天然物の中で、シクロガルグラビン、トリロバチン、およびポドフィリックアルデヒドの全合成を検討し、シクロガルグラビンの全合成を達成した (Chem. Lett. 2014, 43, 610.) 。次に、不斉全合成については、プロリン系有機分子触媒を用いる高エナンチオ選択的シクロプロパン化により望むシクロプロパン化合物 (71% yield, 86% ee) を合成し、得られたシクロプロピルケトンを還元してアルコールに変換し、 ルイス酸を作用させ、ほぼ完全な不斉転写率でジヒドロナフタレンを得た (86% ee → 86% ee)。このジヒドロナフタレン化合物のエステル部位を還元し、低収率ではあるものの、ジヒドロナフタレン天然物の不斉全合成を達成した。
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