研究課題
本研究課題では、剛直な基本構造(B)にドナー(D)、光増感部(P)、アクセプター(A)を三次元的に配置した新規な電子移動制御機能を有するD-B(P)-A三元系分子フォトダイオードの創製を目的とし、光増感部を組み込んだシクロファンの架橋鎖にアクセプターあるいはドナーを導入したA-B(P)-A及びD-B(P)-D三元系分子を分子設計合成し、電子スペクトル、発光スペクトル、サイクリックボルタンメトリ-法、分子軌道計算から、光増感部とアクセプター間あるいはドナー間の電子的効果と影響について評価した。アクセプターdicyanoethylidene(DCN)を導入したA-B(P)-A三元系分子のピレンの酸化電位は、[3.3]パラシクロファンのベンゼン環にピレンを導入した比較化合物のピレンの酸化電位よりも+50mV高電位側にシフトした。このことは、密度汎関数法(DFT法)に基づいて導出された比較化合物とA-B(P)-A三元系分子のピレンのエネルギー準位比較(-5.18eV→-5.70eV)からも、シクロファンベンゼンに組み込まれたピレンへのアクセプターによる電子吸引性効果が存在することを示している。また、A-B(P)-A三元系分子では、比較化合物では観測されなかった450-500nmにブロードな弱い吸収帯が観測され、ピレンとアクセプター間の分子内電荷移動相互作用の存在が示唆された。更に、D-B(P)-D及びA-B(P)-A三元系分子ともにピレンに起因する発光がほぼ消光したことから、D-B(P)-D及びA-B(P)-A三元系分子では、ピレンの光励起状態下におけるピレンとドナー、アクセプター間の電子移動過程を推定できる興味深い結果を得ることができた。
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Tetrahedron Letters
巻: 55 ページ: 749-752
10.1016/j.tetlet.2013.12.013