研究概要 |
本研究では,基幹エネルギーとしてだけでなく,次世代のエネルギー源として注目されるメタンを「軽い」有機分子性結晶で効率的に捕捉・貯蔵することを目的として,これを実現するための材料設計指針を探求する.交付初年度である平成23年度においては,芳香環を窒素原子で連結したアザカリックス[4]アレーンを合成し,その気体吸蔵特性について実験と理論の両面から評価を行った. (1) 合成と結晶構造解析: 合成は,Buchwald-Hartwig芳香族アミノ化反応を鍵反応として行った.次いで,単結晶を調製し,X線結晶構造解析を行った結果,同分子の立体配座は1,3-alternateコンホメーションであり,その結晶構造は分子間CH/πおよびNH/π相互作用によって密に充填されたものであることを明らかにした. (2) 気体吸蔵特性: (1)で調製した単結晶を用いて,五種類のガス(窒素,酸素,アルゴン,二酸化炭素,およびメタン)に対する気体吸蔵挙動の評価を行った.その結果,この単結晶は,密に充填された結晶構造であるにもかかわらず,二酸化炭素を高選択的に吸蔵することが分かった.また,二酸化炭素が吸蔵された状態を,X線結晶構造解析により原子レベルで明らかにした. (3) 理論計算: 北浦-諸熊エネルギー分割法,非経験的分子軌道法,および密度汎関数法を用いて,二酸化炭素の吸蔵状態を解析した結果,(2)で観測された二酸化炭素の高選択的な吸蔵には,分子間CH/O相互作用と分子ふるい効果が重要な役割を担っていることが明らかとなった. なお,以上の成果をまとめた論文(CrystEngComm, 2012, 14, 1041-1026)は,同学術誌においてHot Articleに選定された.
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