研究課題/領域番号 |
23550052
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
津江 広人 京都大学, 人間・環境学研究科(研究院), 准教授 (30271711)
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キーワード | 有機結晶 / 結晶構造 / 気体吸蔵 |
研究概要 |
本研究では,次世代のエネルギー源として注目されるメタンを「軽い」有機分子性結晶で効率的に捕捉・貯蔵することを目的として,これを実現するための材料設計指針を探求する.交付二年目である平成24年度においては,アザカリックス[5]アレーンが有する優れた気体吸蔵特性を詳細に解析するため,同化合物の新規多形結晶を調製し,その気体吸蔵特性について実験と理論の両面から評価を行った. ① 合成と結晶構造解析: 合成は,既報に従って行った.次いで,ベンゼンを包接した単結晶を調製し,X線結晶構造解析を行った結果,同分子の立体配座は1,2-alternateであり,その結晶構造は分子間NH/O相互作用によって構築され,ベンゼンはCH/π相互作用により結晶中に包接されていることを明らかにした.また,脱溶媒後に得られた微粉末結晶について,放射光X線回折パターンから結晶構造を解析したところ,その構築様式は,脱溶媒前のものとほぼ同じであり,アザカリックス[5]アレーンの既報のものとは多形の関係にあることが明らかになった. ② 気体吸蔵特性: ①で調製した新規多形結晶を用いて,五種類の気体分子(窒素,酸素,アルゴン,二酸化炭素,およびメタン)に対する気体吸蔵挙動の評価を行った.その結果,今回調製した多形結晶は,検討したすべての気体分子に対して親和性を示さず,この気体吸蔵特性は,既報のものとは全く異なっていることが分かった. ③ 理論的評価: 当研究室で開発したソフトウェアを用いて,結晶中で気体分子が受けるポテンシャルエネルギーを解析した.その結果,②で観測された気体吸蔵挙動には,結晶中での同エネルギー分布が深く関与していることが判明した.すなわち,多形の関係にある結晶を用いて気体吸蔵特性の評価を行ったことにより,同特性の発現には,分子構造よりも結晶構造の構築様式が大きく関わっていることが明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度において評価した分子系ではメタンの吸蔵は見られなかったが,その理由が,結晶中で気体分子が受けるポテンシャルエネルギーにあることを明らかにした.現在,ケンブリッジ結晶構造データベースを活用して,気体分子を捕捉しうる有機分子性結晶を探索し,その合成を進めているところであり,本研究課題はおおむね順調に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
気体分子を捕捉しうる有機分子性結晶をデータベースから探索し,その合成,ポテンシャルエネルギー分布の解析,ならびに気体吸蔵特性の評価を行うことにより,メタンを効率的に捕捉・貯蔵するための材料設計指針を探求する.
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次年度の研究費の使用計画 |
研究遂行に必要な薬品および器具に加え,研究成果発表のための学会旅費および論文別刷費として研究費を使用する.
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