研究課題
本研究では,次世代のエネルギー源として注目されるメタンを「軽い」有機分子性結晶で効率的に捕捉・貯蔵することを目的として,これを実現するための材料設計指針を探求する.交付最終年度である平成26年度においては,気体分子を捕捉しうる有機分子性結晶を探索し,同候補としてジペプチド誘導体とアザカリックスアレーンに着目した.これらの誘導体を合成し,同結晶を調製するとともに,その気体吸着特性について評価を行った.①合成:ジペプチドについては,三種類の誘導体(BocMetValOMe,BocMetLeuOMe,BocPheGly)を合成した.一方,アザカリックスアレーンについては,当研究室で開発した方法に従って合成した.②結晶構造解析:結晶構造未知のBocMetValOMeとBocMetLeuOMeについて,X線結晶構造解析を行った結果,これらのジペプチドは同形であり,結晶中に空隙は存在するものの,それらをつなぐチャネルは存在せず,見かけ上非多孔質な結晶であることが分かった.BocPheGlyについても,同様の結晶構造であった.③気体吸着特性:ジペプチドについては,単結晶を用いて五種類の気体分子(窒素,酸素,アルゴン,二酸化炭素,およびメタン)に対する気体吸着挙動の評価を行った.その結果,三種類のジペプチド誘導体のうち,BocMetValOMeとBocMetLeuはいずれの気体分子に対しても親和性を示さなかったが,BocPheGlyは,二酸化炭素を特異的に吸着することが分かった.一方,アザカリックスアレーンについては,環状五量体と環状六量体の微粉末結晶がメタンを吸着し,特に前者は常温・常圧という温和な条件下でもメタンを吸着することが明らかとなった.現在,これらの吸着状態を原子レベルで解析するため,ガス雰囲気下でのX線結晶構造解析を進めているところである.
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http://www.orgmater.h.kyoto-u.ac.jp/tsue/