研究課題/領域番号 |
23550053
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
蔵田 浩之 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 講師 (40263199)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | キノメチド / オリゴチオフェン / 酸化還元系 / エレクトロクロミズム |
研究概要 |
今年度は高度キノメチド置換オリゴチオフェン類の合成に取り組み,チオフェンの4つの炭素全てにキノメチドが導入されたテトラキノチオフェン(1),ビチオフェンの6つの炭素全てにキノメチドが導入されたヘキサキノビチオフェン(2)の合成に成功した.化合物1はX線結晶構造解析により,そのチア[4]ラジアレン構造を明らかにした.また,2電子還元によりチエノキノイド構造を有するジアニオン種,4電子還元によりチオフェン構造をもつテトラアニオン種がそれぞれ安定に得られることを見出し,しかもそれらの電子スペクトルが大きく異なるという,いわゆるエレクトロクロミズムを示すことがわかった.さらに,硫黄原子の酸化により対応するS-オキシド,S,S-ジオキシド体を合成し,それらの電子スペクトルおよび酸化還元挙動が化合物1と大きく異なることを見出し,硫黄原子が化合物1の電子構造において重要な役割を果たしていることを明らかにした.化合物2は相当するヘキサフェノール体の酸化反応からは合成することができず,2,3,4-トリフェノール置換チオフェン誘導体の酸化的二量化反応により得ることができた.還元電位の測定から,化合物2はヘキサアニオンまでの生成が確認されたが,1電子目の還元においてその分子構造を大きく変化させることが明らかとなった.現在,さらにチオフェン環の数が増えたオクタキノターチオフェンの合成に取り組んでいる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は高度キノメチド置換オリゴチオフェン類において,オクタキノ体の合成までを目標とした.残念ながら目標を完全に達成することはできなかったが,ヘキサキノ体までの合成は成功し,しかもその合成法も従来の延長ではなく,新規な方法を見出すことができた.またオクタキノ体についても,前駆体までの合成に成功しており,来年度には達成できるものと考えている.またテトラキノ体についてはその構造,反応性,S-オキシド,S,S-ジオキシドへの変換など,その化学に関してほぼ明らかにすることができた.
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今後の研究の推進方策 |
研究計画で挙げた3つの柱のうち,1つがほぼ達成されつつあるので,残りの2つであるテトラキノチエノアセン類ならびにヘキサキノジチエノペンタレン類の合成に取り組む.今年度の研究で得た知見を活かしつつ,より簡便かつスマートな新規合成法の開発を目指す.標的分子が得られれば,その分子構造を明らかにするとともに,酸化還元挙動を中心とした物性面での新たな発見を探索する.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は特に高額の備品等を購入する計画はなく,主として試薬類などの消耗品に充てる予定である.ただ,学会等で成果の発表ならびに情報収集は重要であるので,そのための出張は適宜行う予定である.
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