研究課題/領域番号 |
23550056
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
伊藤 芳雄 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (00221086)
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キーワード | 白金錯体 / ビピリジン / ポルフィリン / フラーレン / 光化学反応 / 電荷移動 |
研究概要 |
ルテニウムイオンとフラーレンを非共有結合的に連結することを特徴とする人工光合成の研究においては、前年度の研究により二つのポルフィリン環を2,6-位に導入した4,4'-ビピリジン誘導体のルテニウム錯体の合成に成功したが、フラーレンとの会合定数が6000程度であり、蛍光寿命および過渡吸収測定には十分ではないと考えられた。そこで本年度はフラーレンの捕捉能が高い置換基の設計と合成をさらに検討した。まず、新しい置換基としてはシクロデキストリンやカリックスアレーンなどのすでにフラーレンとの会合が報告されているものを利用することを検討したが、合成化学上の問題からフラーレンの捕捉実験には至っていない。また、新たに大きな置換基で包み込むような形のフラーレン捕捉を検討するために4-フェナントリル基の導入したピリジン錯体の合成研究も行った。はじめに、遠隔位の置換基間で誘起される相互作用について知見を得るために、ピリジンの3,5-位に4-フェナントリル基を導入し、さらに有機溶媒への溶解性を向上させる目的でt-ブチル基をつけたものの合成を行った。続いてその白金錯体を行い、置換基間の相互作用をNMR測定によって評価したところ、二つの軸不斉によるキラリティーに基づくmesoとdlの二つのジアステレオマー比を手掛かりにして、白金上のハロゲン原子の種類や溶媒効果に対する遠隔位置換基間の相互作用を解析することができた。以上の本年度得られた研究成果は優れたフラーレン捕捉用置換基の開発に有益であり、今後の長寿命電荷分離種の開発の鍵となる成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は芳香族ヘテロ環金属錯体の特性を生かして新しい機能を見出すことを主目的としている。 はじめに設定した金属錯体の合成には成功したが、フラーレン捕捉能が十分ではなかったため、新たに優れたフラーレン捕捉のための置換基開発に着手している。現在までに、4-フェナントリル基を導入して軸不斉によるキラル錯体にすることにより、遠隔位にある置換基同士の相互作用について知見を得ることにも成功しており、今後の展開が期待される。よって、本研究はおおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究により、ルテニウムや白金などの金属イオンをフラーレンと非共有結合的に連結することには成功しており、今後の課題としてはフラーレンの捕捉能を向上させることである。既知のフラーレン捕捉用置換基では合成が難しいので、合成が容易なフラーレン捕捉のための置換基をこれまでの研究成果を基にして新たに開発する。その後は従前通り、金属錯体に変換してその人工光合成の研究へと展開する。
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次年度の研究費の使用計画 |
新しいフラーレン捕捉基を開発するために様々な化合物を合成する必要あるので、研究費は主に合成試薬やガラス器具類などの消耗品を中心に使用する予定である。また、論文投稿のための経費や物性測定、学会発表のための国内旅費にも使用する予定である。
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