研究課題/領域番号 |
23550057
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
野元 昭宏 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60405347)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 燃料電池 / 有機元素化学 / 非白金元素 / バナジウム / 錯体触媒 |
研究概要 |
本年度、燃料となるアルコール類の検索および効率的な酸化触媒の開発について検討した。これまでに酸素還元反応(Oxygen Reduction Reaction; ORR)の検討として、複成するアルコール酸化物を調べてきた。これに基づき、燃料となるアルコール類の適正範囲を調べる目的で、大気圧酸素による触媒反応について詳細に調べた。水中において酸素雰囲気下、種々のアルコールの反応性を調べた結果、フェニル基を有するアルコールでは気体状酸素によって水存在下、良好に反応が進行し高い触媒回転数が得られたが、メタノールやエタノール一般的なアルコールでは反応が進行しなかった。そこで、反応活性の向上を目的として、新規複核錯体触媒の合成に取り組んだ。初めにビピリジルを配位子とするバナジウム錯体を調製検討し、クロロホルムを用いずにメタノールとエーテルで処理し、緑白色粉末を得た。得られた緑白色粉末とタングステン酸ナトリウム、またはモリブデン酸ナトリウムとの反応を水中で行い、黄橙色針状結晶が得られた。X線結晶構造解析を行うことで、バナジウム-タングステン、バナジウム-モリブデン複核錯体を確認した。いずれの錯体においてもアルコールが架橋した構造が確認され、燃料をアルコールとする燃料電池触媒として機能し得ることが示された。今後、これら複核錯体も併せて検討していく予定である。また、糖を燃料とする燃料電池への展開を企図し、糖に対する触媒活性についても検討した。用いた原料は糖の発酵処理によって得られる5-ケト-グルコン酸で、分解生成物と二酸化炭素としての減量を詳細に調べたところ、酸化分解によって生じるグリコール酸と酒石酸が確認され大幅な減量が確認された。従って、糖誘導体を原料とする燃料電池への可能性が見出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度に目標としていた単核と4核の反応性の違いについて詳細に評価し、4核錯体において触媒の耐久性が高いことが明らかとなった。この知見をベースに新しい複核錯体触媒の合成に成功したとともに、水中での触媒機能の発現を確認し、学会、論文にて発表した。また、燃料アルコールについて一定の適用範囲の縛りこみを行い、用いるアルコールを決定した。これらのことから、研究は順調に進行していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に従い、様々なpH下での酸化還元特性と起電力測定を行う。また、燃料としてアルコール以外に糖を用いることが可能であるデータが得られたため、現在、大きな問題となっている廃棄セルロースの燃料化についても検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額の1,477円については、継続的に研究を推進している中で、発生しているもので、直ちに電気化学測定用の硫酸の購入費に充てる予定である。今年度の研究計画、研究費の執行についての変更はない。
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