酸素還元反応(Oxygen Reduction Reaction; ORR)を良好に進行させるためには、酸素が還元されるため酸素自身は酸化作用をスムーズに生起させる必要があり、この点を触媒の開発の大きな主眼点としてきた。昨年度までの検討から、本年は研究計画に従って分子状酸素酸を用いた酸素酸化性、およびフルオラス部位を有する配位子の合成を中心に検討した。その結果、酸素酸化が可能なバナジウム触媒系の設定に成功するとともに、フルオラス導入反応について、金属錯体の構造が明らかとなった。 燃料としてアルコール類を想定し、酸化作用を検討したところ、適切な添加剤と組み合わせることで、水溶媒中、大気下においてベンジルアルコール類の酸化反応が進行し、グラムスケールでカルボニル化合物に酸化されることが明らとなった。また、添加剤として、アニオン性界面活性剤を用いたところ、直鎖脂肪族アルコールの酸化が進行することを見出した。 また、フルオラス導入についてはペルフルオロアルキルヨージドとジホスフィンの光照射により、ペルフルオロアルキルホスフィンが良好な収率で得られ、これを用いた錯体の構造解析に成功した。
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