研究概要 |
分子内に電子受容体(A)および電子供与体(D)を含む化合物の分子内光環化反応を行い,以下の知見を得た。 (1)1-シアノナフタレン(1-CN)の2位に5-アリール-4-ペンチニル基をもつ化合物のベンゼン溶液に>280 nm光を照射すると,1,2-位で[2+2]光環化付加した後,環拡大したベンゾシクロオクタテトラエン誘導体(BCOT)およびBCOTのシクロオクタテトラエン環が渡環した後,1,3-ビラジカルが閉環したリニアー型ベンゾトリキナン(LBTQ)が生成した。反応初期にはBCOTが主生成物として得られ,長時間の光照射でLBTQの生成が増大した。 (2)三重項光増感剤を用いてBCOTに光照射すると,効率よくがLBTQが生成した。また,酸素が十分存在すると,中間に生じると考えられる1,3-ビラジカルが酸素で捕捉された1,2-ジオキソラン誘導体が得られた。 (3)(1)と同条件下,1-CNの4位に5-アリール-4-ペンチニル基をもつ化合物に光照射すると,良好な収率でアンギュラー型ベンゾトリキナン化合物(ABTQ)がBCOTを経由することなく直接生成した。 (4)上記の光化学反応をフロー系マイクロリアクターを用いて行うと,BCOT,LBTQあるいはABTQがそれぞれ生成した。その効率ならびに選択性については現在検討中である。 (5)同様に,フロー系マイクロリアクターを用いて,N-o-クロロベンジルアニリンのアセトニトリル溶液に光照射すると,アニリノ基からo-クロロベンジル基への光誘起電子移動が起こって,フェナンスリジンが生成した。
|