研究課題/領域番号 |
23550061
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研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
加部 義夫 神奈川大学, 理学部, 教授 (40214506)
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キーワード | ポリシラノール / 水素結合ネットワーク / 細孔性材料 / シロキサン結合生成反応 |
研究概要 |
テトラフェニルメタン誘導体やポリヘドラルシルセスキオキサン(POSS)の末端にシラノールを導入すると、シラノールの四面体型水素結合により、結晶状態で細孔性の水素結合ネットワークを形成しヘキサンやベンゼンなどを抱接できることを見出している。今年度はテトラフェニルメタンテトラシラノールの合成方法を改良した。シラノール基の導入のために、ヒドロシランのジメチルジオキシランによる酸化反応を利用していたが、ジメチルジオキシランの収率が低く合成のスケールを大きくすることができなかった。今年度、ヒドロシランをトリクロロシアヌル酸(TCC)で塩素化した後、加水分解することでシラノールを高収率で大量に合成することができるようになった。一方POSSの末端にカルボン酸などの直線型水素結合を導入するため、オクタビニルシルセスキオキサンをRu触媒を用いてp-ビニル安息香酸とのsilylative coupling またはPd触媒を用いてp-ブロモ安息香酸とのHeck反応を検討したが、いずれも不溶性固体になったしまった。 水素結合を利用した分子カプセルおよびネットワークを目標にカリックス[4]アレ-ンのポリシラノール誘導体の合成法をcone型と1,3-altanate型配座について検討した。 Cone型についてはp-t-ブチルカリックス[4]アレーンを塩化アルミニウムを用いて脱tBu化し、続くフェノール基をプロピル化し後、NBSを用いて芳香環の臭素化を行った。そしてリチオ化、シリル化後TCCで塩素化、加水分解で目的の化合物を合成することに成功した。Cone型配座のテトレシラノールカリックス[4]アレ-ン誘導体は予備的なX線結晶構造解析とNMRからシラノール基がカリックスの内部を向き、その中に水スラスターを抱接できるとこが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
テトラフェニルメタン誘導体の大量に合成する合成法を確立できたので、MOFやCOFに展開できるのうになった。カリックス[4]アレーンのポリシラノール誘導体については、cone型に合成はできたので、今後種々の分子やイオンの取り込み実験が可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
テトラフェニルメタンポリシラノール誘導体を大量に合成できる合成方法が確立したので、ポリシラノールがつくるMOFやCOFネットワークの方向に研究を展開する。MOFに関しては金属シラノレートが作る結晶状態でのネットワークの検討を開始する。もっとも簡単な金属としてはアルカリ金属塩が考えられ、ポリシラノール化合物と水素化アルカリ金属との反応で安定に合成できるこを確認している。しかしアルカリ金属でにはイオン性が強く細孔性ネットワークよりも、細密充填構造をとると予想されるため、適度の可逆反応性をもつ遷移金属塩を探索してゆく。さらにPOSSのカルボン酸誘導体の合成を試み、不溶性の生成物をエステル化を試みたが成功しなかった。そこでエステル誘導体を合成してから加水分解を検討する。 カリックス[4]アレーンポリシラノール誘導体については、1,3-altanate配座の合成を検討してシラノールの分子間水素結合によるネットワークの形成を検討する。 一方ポリシラノールからつくるCOFとしては、その相手にアルコールやアルコキシシランが考えられるが、従来のゾルゲル反応でには反応制御が難しいと予想される。ポリシラノールからシロキサン結合でできたCOFを合成するために、今年度はトリスペンタフルオロフェニルボラン、B(C6F5)3を用いるヒドロシランとアルコキシシランからの脱炭化水素によるシロキサン結合生成反応にかえて、塩化ビスマスを用いたt-ブトキシシランとよるクロロシランからの脱塩化t-ブチルによるシロキサン結合生成反応を検討する。 シラノールのつくる水素結合について基礎的知見をえるため、GaussianやAIM計算を同時に進めており、今年度も継続する。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は初年度の購入またはそれ以前のストックした試薬を含む消耗品で研究を賄えたが、それらも消費されてので、次年度の研究費は主として試薬(金属触媒、カリックスアレーンなど)溶剤、グローブボックス用のArなどの不活性ガスの消耗品の購入に使用予定である。さらには、計算化学に必要なPCやソフトウェアも必要に応じて購入することを計画している。
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