研究概要 |
今年度からテトラフェニルメタンおよびシラン、ポリヘドラルシルセスキオキサン(POSS)、カリックス[4]アレーン以外のポリシラノール骨格として新たに、1,3,5-トリエチルベンゼン骨格のトリシラノール誘導体の合成を開始した。1,3,5-トリエチルベンゼン骨格は、2,4,6-位に置換基を導入すると置換基とエチル基がベンゼン環の上下に揃った配座の生成物を与えることが知られている。対応する2,4,6―トリブロマイドを臭化亜鉛存在下、ホルマリンとHBrでブロモメチル化し、続くグリニヤール反応、シリル化で生成したSiH化合物をブロム化、加水分解またはRu触媒で酸化することでトリシラノール体を合成することに成功した。生成したトロトリシラノール体はいずれもX線結晶構造解析に成功し、ケイ素上の置換基がメチル基のときはシラノールが分子間で六量体の水素結合を形成し、置換基がイソプロピル基のときは分子間で三量体、フェニル基のときは分子内で水を取り込んで水素結合分子カプセルを形成するが明らかとなった。 一方、カリックス[4]アレーンテトラシラノールのcone型誘導体のX線結晶構造解析を再検討した。テトラシラノールのSiH体、メトキシ体はいずれもカリックス[4]アレーンの骨格が正方形ではなく、長方形をしており、テトラシラノール体も同様で、そのために、取り込まれた水は、シラノール3ケとシラノール1ケに非対称に水素結合していることが示された。 そして、ポリシラノールの水素結合ではなく、ポリシラノールからCOFやMOFの形成を試みるために、テトラシランテトラシラノール体とSiCl4やTi(NH2)4の反応を検討し、得られて固体化合物のガス吸蔵実験(ASAP)を測定したが、ガス吸蔵は確認できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
予備的な結果として、1,3,5-トリエチルベンゼントリシラノール誘導体とカリックス[4]アレーンテトレシラノール誘導体の1H-NMR実験で、テトラブチルアンモニウムクロライドを添加すると、SiOHのシグラナルが低磁場にシフトすることが観測された。これはトリシラノールおよびテトレシラノールが分子カプセル(アニオンレセプター)として塩素イオンを取り込んでいることを示している。今後種々のアニオン種の取り込みについて検討する。 テトレシランテトラシラノールからCOFやMOFの形成がうまく進行していないが、これはケイ素上の置換基が嵩高い、イソプロピル基であつために縮合反応の進行する程度が少ないかったためと考えれた。今後嵩高さの小さいメイル基のかえて検討をし、ガス吸蔵実験で細孔性を確認する。 一方、最近、COFやMOFのような規則構造を有する細孔材料ばかりでなく、不規則構造の多孔性高分子や多孔性かご状化合物の合成が研究されはじめている。そこでトリフェニルシラントリシラノール誘導体から多孔性かご状分子の合成を検討する。一般にCOF、多孔性高分子や多孔性かご化合物の合成には、動的共有結合と言われるホウ酸エステル、イミン縮合、金属配位結合などの平衡反応が適用されているが、ケイ素を結合を有するそのような平衡反応の報告例はない。シラノールの縮合反応、SiHの脱水素、脱アルカン反応などを検討し、その反応の探索を進めるとともに、トリフェニルシラントリシラかご状分子の合成を検討する。さらにはテトレフェニルシラン細孔性ネットワークの形成にも応用する。
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