研究課題/領域番号 |
23550062
|
研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
山口 仁宏 近畿大学, 理工学部, 教授 (30200637)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 含窒素化合物 / π共役系 / 有機合成 / 物性 / 機能 |
研究概要 |
二種類の含窒素新規π共役化合物の基本骨格(AおよびB)の分子設計および合成を行い、得られた化合物の物性(発光特性)を解明した。具体的には、まず、基本骨格Aの合成については、カルバゾールと2-ブロモヨードベンゼンを縮合し、得られた化合物の Pd 触媒分子内閉環反応を行う方法で行った。その結果、全収率20%で目的の基本骨格Aの合成に成功した。次に、基本骨格Bの合成については、1,3-ジブロモベンゼンの2位をヨウ素化した後、-78℃でブチルリチウムを作用させ、さらに同じ温度で二価の塩化銅を加え、4時間反応させたビフェニル誘導体に変化した。続いて得られたビフェニル誘導体を溶媒を無水THFに変える以外、全く同じ条件で反応させ、合成前駆体であるテトラブロム体に導いた。最後に、アニリンを用いたPd 触媒分子間閉環反応を行い2個のカルバゾール環を構築した。その結果、全収率7%で目的の基本骨格Bの合成に成功した。合成した基本骨格(AおよびB)の構造は、各種物理データを測定することにより確認した。また、物性解明の一つとしてクロロホルム溶液状態での吸収と発光(蛍光)スペクトルを測定し、発光特性(吸収極大波長、モル吸光係数、 発光極大波長、蛍光量子収率)を調べた。その結果、基本骨格Aでは吸収極大波長:320 nm、モル吸光係数(log ε):3.89、 発光極大波長:376 nm、蛍光量子収率:0.28 であり、基本骨格Bでは吸収極大波長:341 nm、モル吸光係数(log ε):4.32、 発光極大波長:444 nm、蛍光量子収率:0.55 であった。この結果は、基本骨格(AおよびB)の基本構造となるN-フェニルカルバゾールの発光特性(吸収極大波長:294 nm、モル吸光係数(log ε):4.27、 発光極大波長:349 nm、蛍光量子収率:0.08 )よりも優れたものであった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の目的は、含窒素新規π共役化合物(基本骨格:AおよびB)の分子設計および合成を行い、各種誘導体の合成も進め、得られた化合物の物性を解明することである。さらに、有機半導体としての物性が見られた含窒素新規π共役化合物については、有機光電材料などの機能評価を行うことである。その目的を達成する為の具体的な実験テーマとして以下の3項目を設定した。すなわち、i)基本骨格Aを有する含窒素新規π共役化合物の合成および物性の解明、ii)基本骨格Bを有する含窒素新規π共役化合物の合成および物性の解明、そしてiii)基本骨格AおよびBを有するヒブリド型含窒素新規π共役化合物の合成および物性の解明である。ここで、平成23年度の研究実績は、テーマi)およびii)の約80%まで達成されている。従って、現在までの達成度は「おおむね順調に進展している」と評価することが出来る。
|
今後の研究の推進方策 |
テーマi)「基本骨格Aを有する含窒素新規π共役化合物の合成および物性の解明」については、基本骨格Aのハロゲン化を行い、導入されたハロゲン基を足がかりとして各種官能基の導入を行い、基本骨格Aを有する各種誘導体の合成を進める。 テーマii)「基本骨格Bを有する含窒素新規π共役化合物の合成および物性の解明」については、p-位に各種官能基を有するアニリン誘導体との Pd 触媒環化反応より基本骨格Bの各種誘導体の合成を進める。この方法においては、窒素原子に結合したベンゼン環のp-位に各種官能基が既に導入されている。特に、p-位がハロゲン基の化合物については、ハロゲン基を足がかりとして更なる各種官能基の導入を行い、基本骨格Bを有する各種誘導体の合成を更に進める。 合成した各種誘導体の発光特性をはじめとする物性解明を行う。そして優れた物性を示す誘導体については、高効率的合成法を確立する。その際、鍵段階となるPd 触媒反応について各種条件を精査し、収率の向上はもちろんのこと、オリジナルの新規反応の確立も目指す。さらに、テーマiii) の標的化合物である基本骨格AおよびBを有するヒブリド型含窒素新規π共役化合物を分子設計し、予備実験を開始する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の研究費の使用計画は、当初の計画(物品費:1,050,000円、旅費:100,000円、その他:50,000円)に従って行う予定である。但し、平成23年度の使用実績を考えると、旅費およびその他の一部を物品費として使用する可能性もある。
|