研究課題/領域番号 |
23550062
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
山口 仁宏 近畿大学, 理工学部, 教授 (30200637)
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キーワード | 含窒素化合物 / π共役系 / 有機合成 / 物性 / 機能 |
研究概要 |
まず、昨年度確立した二種類の含窒素新規π共役化合物の基本骨格(AおよびB)の合成法を改良し、Aについては出発原料のカルバゾールからの全収率を20%から33%に向上させ、Bについては出発原料の1,3-ジブロモベンゼンからの全収率を7%から12%に向上させることができた。次に、AおよびBについて各種誘導体の合成を行った。Aについては、基本骨格をトリハロゲン化し、得られた化合物に4-メトキシエチニルベンゼンを薗頭カップリング反応の条件で作用させ誘導体1を合成した。また、4-メトキシフェニルボロン酸を鈴木・宮浦カップリング反応の条件で作用させ誘導体2を合成した。Bについては、基本骨格の合成前駆体であるテトラブロム体に4-シアノアニリンを用いたPd触媒分子間閉環反応を行い、2個のカルバゾール環を構築して誘導体3を合成した。 合成した各種誘導体の構造は、各種物理データを測定することにより確認した。そして、クロロホルム溶液状態での吸収と発光(蛍光)スペクトルを測定し、発光特性(吸収極大波長、モル吸光係数、発光極大波長、蛍光量子収率)を調べた。その結果、誘導体1と2は、発光極大波長:418 nmと417 nm、蛍光量子収率:0.65と0.61となり、基本骨格Aのそれ(発光極大波長:376 nm、蛍光量子収率:0.24)に比べ大きく向上していることが分かった。一方、誘導体3は、発光極大波長:436 nm、蛍光量子収率:0.51となり、基本骨格Bのそれ(発光極大波長:444 nm、蛍光量子収率:0.55)に比べ同程度の発光特性を示すことが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の目的は、含窒素新規π共役化合物(基本骨格:AおよびB)の分子設計および合成を行い、各種誘導体の合成も進め、得られた化合物の物性・機能を解明することである。さらに、優れた物性がみられた含窒素新規π共役化合物については、有機光電材料としての機能評価を行うことである。その目的を達成するための具体的な実験テーマとして以下の3項目を設定した。 i)含窒素新規π共役化合物(基本骨格:AおよびB)の合成法の確立 ii)基本骨格(AおよびB)の各種誘導体の合成および物性解明 iii)基本骨格(AおよびB)の各種誘導体の合成、物性および機能解明 ここで、平成24年度までに得られた結果から、テーマ i)についてはほぼ100%達成された。テーマ ii)については平成24年度の結果から約80%達成されたと言える。従って、現在までの達成度は「おおむね順調に進展している」と評価することが出来る。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、テーマ iii)「基本骨格(AおよびB)の各種誘導体の合成、物性および機能解明」を中心に研究を進め、AおよびBともに、数種類の新規誘導体の合成を行い、その物性の解明を進める。さらに、クロロホルム溶液状態で優れた物性(特に発光特性)を示した化合物については、ポリマーとの混合によるフィルムを作成し、フィルム状態での発光特性を調べる。また、実用化のための基礎データとして重要となる固体状態での発光特性も調べる。そして、優れた物性を示す誘導体については、高効率的合成法を確立し、大量合成を行う。また、学内や企業との共同研究を計画し、有機光電材料としての機能評価を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の研究費の使用計画は、当初の計画に従って行う予定である。但し、平成23年度および24年度の使用実績を考えると、旅費およびその他の一部を物品費として使用する可能性もある。
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