研究概要 |
平成25年度は、これまでの研究をさらに発展させ、(tert-ブチル)ビス(トリメチルシリル)アシルシランをシレン前駆体として用いて、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン存在下で熱反応を行った。140℃の反応においては、高収率でシラシクロヘキセン誘導体が得られた。ヘキサメチルジシロキサンの脱離を伴うシラシクロヘキサジエンの生成を期待して、得られたシラシクロヘキセン類を250℃の温度で熱反応させたところ、異性化反応が進行することが明らかとなった。トリメチルシロキシ基とトリメチルシリル基がお互いに反対方向から転位していることも見出した。この反応機構は、当研究室により初めて見いだされたものである。 また、ゲルメン生成に関しては、当初の計画通りにフェニルエチニルトリス(トリメチルシリル)ゲルマンの合成を行い、その熱反応を行った。反応中間体としてゲルマプロパジエン誘導体が生成しているものと考えられ、新しい反応を見出すことができた。新たなゲルメン生成を目的として、フェニルエチニルトリス(トリメチルシリル)ゲルマンの光反応も試みてみたが、ゲルミレンの脱離反応のみが見られた。熱反応と光反応の明確な反応性の違いも明らかにすることができたと考えている。 今回得られた結果は、今後の含ケイ素および含ゲルマニウム機能性材料の開発に応用できるものであり、有機ケイ素化学、有機ゲルマニウム化学はもとより、有機化学全般において重要な知見を与えるものであると考えている。
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