研究課題/領域番号 |
23550066
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
上野 圭司 群馬大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20203458)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 有機金属 / 遷移金属 / ケイ素化学 / シラノン錯体 / シリレン錯体 / シロキサン / 不飽和結合 |
研究概要 |
(1)シリル(シリレン)タングステン錯体1にジメチルアミノピリジン(DMAP)存在下でピリジン-N-オキシド(PNO)を反応させることで,DMAPがケイ素に配位して安定化されたシラノンタングステン錯体2の合成に成功した。錯体2は黄色結晶として高収率で単離できた。また,錯体2の結晶構造解析によりその構造を明らかにした。その結果,シラノン配位子のケイ素-酸素結合距離は通常の単結合よりかなり短く,また,理論計算により予測されていたケイ素-酸素二重結合距離の範囲内にあることが分かった。これは,シラノン錯体2中のシラノン配位子のケイ素-酸素結合が,二重結合の性質を保持していることを示唆している。(2) DMAPを加えずに錯体1と過剰量のPNOを反応させると,いくつかの中間体を経由して,最終的にW-O-Si-O-Si骨格を持つジシラノキシ(ジオキソ)タングステン錯体3が生成した。中間体の単離には成功していないが,この反応はシラノン錯体を中間体として進行すると考えられる。そこで,DMAPが配位して安定化したシラノン錯体2に3当量のPNOを反応させたところ,いくつかの中間体を経て,最終的に錯体3が生成することがわかった。現在,中間体の単離と構造決定を進めている。(3)シリル(シリレン)モリブデン錯体4にDMAP共存下でPNOを反応させると,錯体2のモリブデン類縁体であるシラノンモリブデン錯体5が生成した。錯体5の各種スペクトルは錯体2のスペクトルと似ており,錯体5はタングステン錯体2と類似の構造を有する考えている。現在,錯体5の単離を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は,タングステン錯体の単離と構造決定に成功し,また若干の反応性を明らかにすることができた。モリブデン錯体の単離も進んでおり,さらに,新規錯体の合成検討にも着手している。計画の八割程度は達成できており,おおむね順調に進展していると自己評価している。
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今後の研究の推進方策 |
当初研究計画の変更は考えていないが,本研究で扱う錯体はいずれも空気および水に非常に鋭敏であり,単離に苦労している。また,非常に小さな結晶しか得られないことも多く,既存設備では結晶構造解析ができないことがよくある。この結晶構造解析における問題については,他機関および測定機器メーカーの協力を得ることで改善し,研究の効率化を図る予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費を当初の予定通り執行した結果端数が生じたが、その端数については平成24年度予算とあわせて,錯体合成に必要な試薬類,ガラス器具類等の消耗品の購入に使用する。
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