研究課題/領域番号 |
23550066
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
上野 圭司 群馬大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20203458)
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キーワード | 有機金属 / モリブデン / ケイ素化学 / シラノン / シリレン / シロキサン / 不飽和結合 / 構造 |
研究概要 |
昨年度,シリレン配位子上にメシチル基(Mes)を2つ有するシリル(シリレン)モリブデン錯体Cp*(CO)2Mo(=SiMes2)(SiMe3)にDMAP共存下でピリジン-N-オキシド(PNO)を反応させると,シラノンモリブデン錯体Cp*(CO)2Mo(O=Si(DMAP)Mes2)(SiMe3) (1)と考えられる錯体が得られることを見いだした。今年度は錯体1の単離を試み,最終的に黄色結晶として収率58%で単離することに成功した。錯体1は各種スペクトルおよびX線結晶構造解析により同定したが,不安定なため元素分析は満足できるデータが得られていない。錯体1は,すでに構造が明らかになっているシラノンタングステン錯体とよく似た構造を持つことが,結晶構造解析の結果から明らかになった。単離した錯体1を用いてシラノンモリブデン錯体の反応性をいくつか検討した。まず,熱反応を行ったところ,シラノンが脱離して,代わりにDMAPがモリブデンに配位した錯体Cp*(CO)2(DMAP)(SiMe3) (2)が得られた。この結果は,対応するタングステン錯体の熱反応では複雑な混合物が得られることと対照的である。錯体2は黄色結晶として収率44%で単離され,元素分析,各種スペクトルおよびX線結晶構造解析により同定した。錯体1にピリジン-N-オキシド(PNO)を反応させると,錯体1のDMAPがPNOに置換された錯体3が得られた。この錯体3を加熱すると複雑な混合物が生成した。しかし,熱分解をPMe3存在下で行うと,Mo-O-Si-O-Si骨格を有するジシラノキシ錯体と思われる化合物が生成することが分かった。現在,この生成物の単離を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度はシラノンモリブデン錯体の単離と構造決定に成功し,またそのいくつかの反応性を明らかにすることができた。これによって,モリブデン錯体とタングステン錯体の反応性の違いを明らかにすることができた。また,まだ結果を報告できる段階ではないが,新規合成ルートによるシラノン錯体合成にたいする検討も進んでいる。従って,当初計画の七割程度は達成できており,おおむね順調に進展していると自己評価している。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画の変更は考えていない。本研究で扱う錯体はいずれも空気および水に非常に鋭敏であり,昨年同様に,単離同定に苦労している。特に結晶構造解析に必要な大きさの単結晶が得られず,既存設備ではX線結晶構造解析が行えないことがよくある。この問題は,他機関および測定機器メーカーの協力を得ることで対応しているが,根本的には装置の更新を図る必要があり,本研究だけではいかんともしがたい。来年度は最終年である事から研究を纏めるべく活動を行うとともに,新しい課題に取り組みたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の予定通り研究を行い,研究費を使用したが,最終的に繰り越しが発生した。この繰り越し分は,平成25年度予算と合わせて,錯体合成に必要な試薬類,ガラス器具類等の消耗品の購入に使用する予定である。
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