研究課題/領域番号 |
23550072
|
研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
天野 良平 金沢大学, 保健学系, 教授 (30111769)
|
研究分担者 |
鷲山 幸信 金沢大学, 保健学系, 助教 (80313675)
宮地 利明 金沢大学, 保健学系, 教授 (80324086)
志賀 英明 金沢医科大学, 医学部, 准教授 (80436823)
|
キーワード | 高LET核種 / アルファ核種 / 壊変系列 / 内部被ばく線量 |
研究概要 |
本研究課題である「嗅神経及び腫瘍へ集積し高エネルギーを付与する原子核プローブに関する核放射化学研究」の目的は、「放射性壊変エネルギーの人体利用」という地平を拓くために基礎研究として、「α放射線放出の高LET放射性核種の局在による、その部位への付与エネルギー (ミクロ吸収線量)とその効果」を、基本的なデータを集積することで確かめようとするものである。平成25年度の成果について述べる。 (1)鼻腔局在集積の201Tlについて付与エネルギーを評価する課題について引き続き検討した。即ち、電子捕獲壊変(EC)の201Tlの臨床的な時間的・空間的な移行・集積を、マウスおよびヒトの鼻腔及び嗅神経のイメージングによって捉え、MIRD法による吸収線量を評価し、細胞レベルの安全性について、組織化学的な検討を行った。 (2)腫瘍組織に局在するアルファ核種における付与エネルギーを評価する課題について、4壊変系列(ウラン系列、アクチニウム系列、ネプツニウム系列、トリウム系列)に211Atを加えて、様式が異なるTh,Ac, Ra, Bi,Pb, Tl,Atの複数核種の対に注目して、検討した。トリウム系列、232Thα228Raβ228Acβ228Thα224Raα220Rnα216Poα212Pbβ212Biβ212Poα208Pb、について検討を始め、特に224Raα220Rnα216Poα212Pbβ212Biβ212Poαの4α線+2β線に先ず注目し、次にアクチニウム系列のの一部である223Raα219Rnα215Poα211Pbβ211Biα207Tlβの227Thの、同じ4α線+2β線に注目して、比較検討した。現在も検討中である。 (3)211Atの放射化学を展開し、核種の製造、分離を検討し、臨床的有用性について検討した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「研究の目的」の「高LET放射性核種の局在部位における付与エネルギー (ミクロ吸収線量)の基礎概念を基本的なデータを集積することで確かなものにする」について、鼻腔局在集積について前年度から「おおむね順調に進展している」と評価できるが、腫瘍組織局在のアルファ核種の検討については「遅れている」と評価する。前年度の「やや遅れている」を挽回するために、今年度は、211Atアルファ核種の検討についての検討を加えた。系列核種の展開には下記のような問題点があった。 (1)アルファ核種の取扱の困難さ (2)被災した施設における核種の譲渡等の困難さ これらの点を踏まえ、201Tlと211Atの検討に加え、224Raと223Raに始まる2系列について検討し、所期の目的を達成したい。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究課題の推進のための方策について、平成25年度の反省に立ち、次年度次のように計画する。 (1)鼻腔局在集積の201Tlについて付与エネルギーを評価する課題について、MIRD法評価を実現するために、マウス(できればヒトも含む)鼻腔定義付を行い、内部被ばく線量評価を行う。 (2)腫瘍組織局在のアルファ核種における付与エネルギーについて、211Atアルファ核種の研究に加え、224Raα220Rnα216Poα212Pbβ212Biβ212Poαの系列と223Raα219Rnα215Poα211Pbβ211Biα207Tlβの227Thの系列、について検討する。 以上の事業を、平成26年度に推進する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
本研究課題の主要な材料である「壊変系列核種の群」は、その親である長寿命の放射性核種からミルキング法によって放射化学的に取得し法的に譲渡を受ける必要がある。十分な研究には頻回の譲渡が必要である。長寿命放射性核種を保有する施設は、被災したが徐々に、その譲渡準備は整い、共同利用が行われるようになり利用している。期間を延長した次年度において、十分な回数が確保できると期待できる。 壊変系列の、224Raα220Rnα216Poα212Pbβ212Biβ212Poαの系列と223Raα219Rnα215Poα211Pbβ211Biα207Tlβの取得のための、旅費、化学分離の薬品等、その他、比較のための市販放射性核種の購入等、さらに成果報告のための経費として支出する。
|