研究課題/領域番号 |
23550073
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
小澤 智宏 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70270999)
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研究分担者 |
米村 俊昭 高知大学, その他の研究科, 教授 (90240382)
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キーワード | 一酸化窒素センサー / NO高選択性 |
研究概要 |
今まで実施してきた研究データにおいて、一酸化窒素が酸化された成分を含むものがあることが判明したため、平成24年度は、取り扱いが困難な一酸化窒素の厳密な取り扱い方法の取得とそれによるデータの再現性の確認とともに新たにデータを取得した。一酸化窒素の取り扱い方法については梨花女子大学(韓国)ナム教授の研究室に設置された装置を利用して反応性に関する追加試験を実施した。ここで得られたデータを基本として本研究室内でもナム教授の装置の概念を応用した簡易装置を準備し、同様の実験を実施したところ、今までの一酸化窒素精製システムでは部分的に酸化され二酸化窒素が含まれてしまうことを確認するとともに、システムの改良(塩基性水溶液処理)によりデータの再現性について検討した。 上記システムを用いて含流配位子を用いたコバルト(III)錯体の一酸化窒素反応性を再検討した。エタノール溶液中にコバルト(III)錯体を溶解し、新システムから得られた一酸化窒素ガスをガスタイトシリンジを用いて一定体積を嫌気条件下で導入した。紫外可視吸収スペクトルを用いて変化を追跡したところ、等吸収点を通る現象が2段階にわたってみられた。これは2種類の化学種が段階を追って生成していることを示している。ほとんど吸収スペクトルが変化しなくなる段階で、溶液中の錯体を極性が低い溶媒から析出させ赤外吸収スペクトルを測定したところ、配位した一酸化窒素のN-O伸縮振動であると帰属できる2つの新しい吸収帯を観測した。その振動数の値から、2つの一酸化窒素が配位した化学種が生成し、それぞれ直線型とやや屈曲した型で配位した構造を有していると推定した。 フェノール骨格を有する鉄(III)錯体においても同様の反応を検討したが、含硫型コバルト(III)錯体と比較して一酸化窒素に対して不安定であり、分解している挙動を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は一酸化窒素ガスを用いて一酸化窒素の検出能力(定量的な検出)評価を実施することを予定していた。しかしながら「研究実績の概要」でも記した通り、一酸化窒素ガスの取り扱いに問題があることが判明したため、本年度は一酸化窒素ガスの取り扱いについて再検討を行う必要が生じた。ガスの取り扱いに長けている韓国:梨花女子大学のナム教授にその精製法をご教授いただき、基礎データを得た。これを基準としてより簡易なシステムを本学内で構築し、約半年がかりで二酸化窒素の影響を無視できる手法を習得した。次いでこれを用いて今まで実施してきたデータの精査を行った。一酸化窒素を大過剰に導入した場合、部分的に二酸化窒素の結合による金属錯体の分解等が生じていることが判明したため、すべての金属錯体を対象に一酸化窒素との反応性を再検討した。この作業に要する時間がかなりかかり、結果として遅れることになってしまった。しかしながら本研究を遂行するにあたり定量化を実施することは必須であり、信頼あるデータの供出が可能となったことは非常に大きな前進である。
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今後の研究の推進方策 |
24年度で純粋な一酸化窒素との反応生を評価できたことから、本年度は一酸化窒素の溶液中における定量化から手がけていく。また本研究の最終目的はデバイスの構築であることから、これら機能性分子の電極への修飾を試みる。具体的な手法を以下にに記す。 1. 一酸化窒素の定量化について 機能性分子の溶液に対して嫌気条件下で既知濃度の一酸化窒素を逐次添加していく。この際選択できる溶媒は、一酸化窒素の濃度が確定しているアセトニトリル、クロロホルムを主として評価する。錯体の溶解性が許せば、水溶液中での評価も検討したい。 2.デバイス化について 電気化学的な手法が感度・加工性・汎用性の面から優れていると考えられる。従って本機能性分子は電極に対して修飾することにより、高い一酸化窒素選択性を示す電極材料が構築できる。そこで、錯体の構造を維持したまま電極修飾可能な官能基を導入する(合成はすでに完了している。)安定で生体内において毒性を示しにくい貴金属電極を選択した。そのため修飾部位には硫黄原子を導入し、強いM-S結合を通じて自己集積膜を電極表面に作成する。表面の配向性は電気化学的な測定法や分光学的な測定法を通じて評価する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は最終年度であるため、電極への修飾を主として検討する。そのため予算のほとんどは電極用金属(金・白金)の購入と電極修飾部位を有する金属錯体の合成に必要な試薬・溶媒にあてられる。設備に充てる予定はない。
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