本研究課題の目的は、光応答性超分子ルテニウム(II)-白金(II)及びルテニウム(II)-金(I)複合錯体の光物性及び電子物性を解明し、これら超分子金属錯体を金属基板上への導入するための配列制御法の確立にあった。そこで、平成25年度はルテニウム(II)-白金(II)複合錯体の段階的な合成法を確立するための様々なアプローチによる探索とルテニウム錯体の金基板上における配列構造を推定するための分光測定を中心に研究を行った。具体的には、24年度まで行っていた銅触媒によるランダムな超分子金属錯体の合成を見直し、他のアプローチから探索することでより高選択的な段階的合成法の探索研究を行った。結果としては、以前より第一段階である目的物Pt(II)-Ru(II)-Pt(II)三核錯体の収量を選択的に増やす合成法を見つけることは出来たが、まだ30%程度の生成率で、単離方法に関しても検討の余地が残っている。他の研究としては、前年度までに確立したルテニウム錯体の単分子膜を金基板上に自己組織化する研究に関して、錯体分子の配列構造に関するさらなる知見を得るために分光学的な測定によるアプローチを行った。結果としては、顕微レーザーラマンスペクトル測定により金基板上の錯体分子の存在を確認することに成功した。今回の研究で用いているナノメートルレベルでテラス状構造を持った金基板上に自己組織化膜を形成したことが幸いして、通常の赤色レーザーで表面増強ラマンスペクトルとして観測できた。更に、他の研究で合成したピリジル基を有するルテニウム(II)ポリピリジル錯体による自己組織化膜との比較からチオフェノール基によって金基板に強く結合していることが推定できた。この結果は、本研究で想定した金電極と錯体との接合に関して有用な結果であり、超分子金属錯体の接合及び配列構造に関して重要な知見が得られたと言える。
|