研究課題/領域番号 |
23550077
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
三方 裕司 奈良女子大学, 共生科学研究センター, 准教授 (10252826)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 環境分析 / 分子認識 / 重金属 / 蛍光プローブ / 生物無機化学 |
研究概要 |
本年度の研究開発においては,水溶性の向上と蛍光強度の増大すなわち蛍光量子収率の向上を目指した。目的物である蛍光センサー分子(L)は,アルデヒド基を有するクマリン誘導体とエチレンジアミンの還元アミノ化により収率良く得ることができた。この化合物は分子量も小さく,極性の高いクマリン部位を持ち,エチレンジアミンに由来するNH部位を有することから,高い水溶性を有していたが,実際に水中でスペクトルを測定すると,吸光度や蛍光強度が測定中にわずかながら変化し,化合物が徐々に分解していることが示唆された。そこで,DMF/H2O(1/1)の混合溶媒を用いて測定を行ったところ,上述のような分解反応は見られなかったため,スペクトル測定は従来通りDMF/H2O(1/1)の混合溶媒を用いて行った。 L単独では強い蛍光(量子収率= 0.135)を発したが,その蛍光は水銀イオンの添加により消光し,2当量程度水銀イオンを加えるとその変化はストップした。これはLと水銀イオンの錯形成に伴う重原子効果により,Lの蛍光発現メカニズムが効果的にクエンチされたためであると考えられる。金属イオン添加によるこのような消光は,水銀および銅イオンに特異的であった。一般的に,エチレンジアミン骨格を有する配位子は銅および亜鉛に対して高い親和性を有するが,Lは水銀と同じ属である亜鉛およびカドミウムイオンに対してはほとんど蛍光応答しなかった。 また一方,抗腫瘍性白金錯体,抗リューマチ性金錯体,テクネチウム・レニウムを用いた放射性医薬品など,様々な金属錯体を用いた医薬・診断薬が開発されていることから,本研究では,キノリン部位を有する蛍光性レニウム錯体を合成し,糖分子の有する水溶性と細胞親和性を利用して細胞への取り込みを促進する配位子の開発を行った。さらに,蛍光顕微鏡観察を用いて,細胞への取り込みと細胞内分布を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
水銀イオンの添加により蛍光応答する化合物の開発に成功した。この化合物は銅イオンに対しても応答するが,さらなる分子設計により,水銀イオンに対する選択性を向上させることが可能であると期待される。また,糖分子の毒性軽減効果により,配位子および金属イオンの毒性をマスクした化合物の開発に成功し,細胞内への効果的な金属導入法を見いだした。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度の研究をさらに発展させ,より感度と選択性に優れた微量有害金属イオンの検出法を開発していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
主に化合物合成用誌薬・器具類などの消耗品費に充てる。成果発表および研究動向調査のための旅費も計上する。
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