研究課題/領域番号 |
23550077
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
三方 裕司 奈良女子大学, 自然科学系, 准教授 (10252826)
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キーワード | 環境分析 / 分子認識 / 重金属 / 蛍光プローブ / 生物無機化学 |
研究概要 |
チオエーテル連結鎖を有するビスキノリン誘導体(BQET, 6-MeOBQET, TriMeOBQET)を合成した。BQETはHg2+を添加することで蛍光増大を示すOFF-ON 型,メトキシ基を1つ導入した6-MeOBQETはHg2+の添加により短波長側で蛍光が消光し,長波長側で蛍光が増大するレシオメトリック型,またメトキシ基を3つ導入したTriMeOBQETはHg2+の添加に伴い蛍光が消光するON-OFF 型のセンサーとなることが分かった。BQETはHg2+に対して選択的なセンサーとなったが,他の2つの化合物は鉄(III)イオンにも蛍光応答した。これらの化合物は有用な水銀イオンセンサーとなることが示された。 また,シクロヘキサンジアミン骨格を有するテトラキスキノリン誘導体であるTQDACHを合成した。この化合物は亜鉛イオンに対する高い蛍光強度と選択性を示した。これは,亜鉛イオンとの錯形成時に分子の動きが制限され,振動によるエネルギーロスが軽減されることにより効率的に発光すると解釈される。このことは,より自由度の高い構造を有するTQENの亜鉛錯体の蛍光強度が低温で増大することにより確認された。また,TQDACHでは,金属イオンに配位する窒素原子の配置が制限されることにより,亜鉛イオンに対する選択性も向上することがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Hg2+に対して,OFF-ON,レシオメトリック型,ON-OFF 型のセンサーとなるBQET誘導体の合成に成功した。これらの化合物は有用な水銀イオンセンサーとなることが示されたが,鉄(III)イオンに対しても応答することがわかった。さらなる分子設計により,水銀イオンに対する選択性を向上させることが可能であると期待される。また,亜鉛イオンとの錯形成時に分子の動きが制限され,振動によるエネルギーロスが軽減されることにより効率的に発光する亜鉛蛍光センサーTQDACHの開発にも成功した。金属イオンに配位する窒素原子の配置が制限されることにより亜鉛イオンに対する選択性も向上することがわかり,これらの知見は,他の金属イオンの選択性向上にも重要な示唆を与える。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度の研究をさらに発展させ,より感度と選択性に優れた微量有害金属イオンの検出法を開発していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
主に化合物合成用試薬・器具類などの消耗品費に充てる。成果発表および研究動向調査のための旅費も計上する。
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