研究概要 |
pH調節により可逆的に分解・再構築出来る金属錯体をベースにしたキラルな分子ケージ錯体の創出を目指している。昨年度、交付申請書に記したNi(II) 14核錯体が、内部空間にヘキサメチレンテトラミン(hmt)を1分子取り込むことができるということを明らかにした。hmtとよく似た分子骨格と分子体積を持つアダマンタン(Ad)をhmtの代わりに用い、hmtを内包した分子ケージの合成法と同じ条件で、Adを内包したケージの合成を試みたところAdはケージに内包されず、空のケージのみが得られた。この結果から、我々の分子ケージは配位結合的相互作用が可能な分子をより取り込みやすいということが推測された。ケージが分子を取り込む理由の一端を明らかにすることができた。思うように人をつけられなかったため計画が遅れているが、この結果は現在投稿に向けて再現性の確認とESI-MSの測定に取り組んでいるところである。 次に、キラルなゲスト分子としてアラニンと3-pyrrolidinolを選択し、それらの分子ケージへの取り込み挙動を検討したところ、アラニンの場合にはアラニンがケージの生成を妨害し、3-pyrrolidinolは立体的要因でケージに取り込まれないことが明らかとなった。より小さな2,3-butanediolや、2-butanolを用いて更なる検討を行っている。 また、分子の取り込みをNMRで確認ために反磁性の分子ケージの合成を計画し、その原料錯体として三脚型六座配位子1,1,1-tris[2-(((imidazol-4-yl)methylidene)amino)methyl]ethaneの単核Co(III)錯体をを合成した。現在この錯体とCp*Rhフラグメントを組み合わせた8核ケージ錯体や、Ni,Pdと組み合わせた14核ケージ錯体の合成に取り組んでいる。
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