研究課題/領域番号 |
23550079
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
久保 和幸 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (90263665)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2016-03-31
|
キーワード | シクロメタラホスファザン / 二核金属錯体 / メタラホスフィノボラン / アンホテリック / 小分子活性化 / 協奏反応 / Frustrated Lewis Pair |
研究概要 |
ポリホスファザンX-{N(R)P(R')}n-Yは、Softな塩基(P)とHardな塩基(N)が交互に連なった、特異な構造を有する。それ故、鎖状ホスファザンの両末端を遷移金属で閉環したシクロメタラホスファザンは、遷移金属の近傍に多数の塩基性サイトが配列した環状構造からなる、新規な多点反応型錯体として働くと期待できる。本研究では、ビスイミノホスホラン鉄錯体Li[(C5Me5)(CO)Fe{P(=NPh)(OMe)2}2]の2つのイミノ窒素同士を、-P(R'){N(R)P(R')}n-フラグメントで架橋した、新規なメタラシクロホスファザンの合成を検討した。PR'架橋(n = 0)の場合は、架橋リン原子の立体配置が異なる2つの異性体の単離に成功し、いずれの異性体についてもX線構造解析により、その構造の詳細を明らかにした。さらに、これらの錯体と様々なルイス酸との反応性を検討した。その結果、金錯体との反応では、架橋リン原子が金に配位した鉄-金二核錯体の合成に成功し、その構造の詳細を明らかにした。 アルケンと等電子構造を有するホスフィノボラン(R2P=BR'2)は、リン、ホウ素間に大きく分極した二重結合を持ち、ルイス酸ともルイス塩基とも反応するアンホテリックな性質を有する。本研究では、このホスフィノボランを反応性配位子としてとらえ、このリン上に遷移金属(Fe)フラグメントを導入したメタラホスフィノボランの合成ならびに構造、反応性について検討した。その結果、(C5Me5)(CO)2Feまたは(C5H5)(CO)2Feフラグメントと、様々な置換基(Ph, Mes, Tipp, Mes*)をリン上に導入したメタラホスフィノボラン(R'=Mes)の合成に成功した。それらのX線構造解析を通して、リン上の遷移金属フラグメントや置換基が、P=B結合ならびにP-Fe結合に及ぼす効果を系統的に調べた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
メタライミノホスホラン関連では、主として多点反応型のメタラシクロホスファザンへの誘導を検討し、その単離、構造解析、反応性の検討まで研究を進展させることが出来た。ホスフィノボラン関連ではメタラホスフィノボランの合成法を確立し、様々な置換基を導入した錯体の構造解析データを蓄積することによって、構造や反応性に及ぼす系統的な置換基効果を明らかにすることが出来た。これらの成果は、今後の本研究課題の進展に欠かすことが出来ない基礎的な知見であり、初年度遂行状況としてはおおむね順調に進行しているといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
23年度にメタラシクロホスファザンならびにメタラホスフィノボランの合成法を確立し、その構造や性質に関する基礎的な知見を得た。今後はこれらの化合物の反応性を中心に検討する予定である。また、得られた構造を元に、計算化学的手法によって、これらの化合物の電子構造の詳細を明らかにする。メタラシクロホスファザンに関しては新規な複核遷移金属錯体の合成、ならびに金属間協奏反応の構築を検討する。また、メタラシクロホスファザン骨格を延長し、多数のローンペアを有するマクロサイクルへと拡張する。さらに、メタラシクロホスファザンと各種小分子との反応を検討し、新奇な金属-配位子間協奏型反応の開発も行う。ホスフィノボラン関連では、そのアンホテリックな反応性を利用した小分子の活性化反応を検討する。ホスフィノボランはFrustrated Lewis Pairとして不活性結合をヘテロリティックに開裂することが知られている。そこで本研究では、メタラホスフィノボランを用いて、配位子上での基質の活性化と金属上での変換をリンクさせた、新しいコンセプトに基づく協奏反応型錯体の構築を目指す。
|
次年度の研究費の使用計画 |
23年度の予算はおおむね計画通りに執行できた。次年度経費は23年度に比べてかなり縮小されるが、実験器具類等の購入量が減ることが期待されるため、本研究の遂行に支障はないと予想される。研究必需品や試薬の購入(500,000円)を中心に、成果発表のための旅費(160,000円)、その他(論文投稿費等、40,000円)等、23年度に準じた経費使用計画を作成した。
|