研究概要 |
初年度の4,4'-ビピリミジン(bpm),昨年度のその誘導体である6,6'-ジメチル-4,4'-ビピリミジン(Me2bpm)に加えて,本年度は新たに関連配位子として4,4'-ビキナゾリン(biqz)を合成し,同様の実験を行なった。エチレン雰囲気下,メタノール中,[Cu(MeCN)4]X (X=BF4 or PF6)とbiqzを反応させると,銅(I)配位高分子{[Cu4(biqz)2(MeCN)4(MeOH)4](BF4)4}n (1)および {[Cu4(biqz)2(MeCN)8](PF6)4}n (2)が得られた。錯体1および2はいずれも,2つのCu(I)イオンが2つのbiqzに橋かけされ,14員環Cu4C6N4骨格を形成し,さらにこのCu4C6N4骨格が別のbiqzにより連結されることより,一次元二重鎖構造を形成していることを明らかにした。一方,エチレン雰囲気下,アセトン中,[Cu(C2H4)n]ClO4とbiqzを反応させると,エチレンが付加したCu(I)配位高分子{[Cu2(biqz)(C2H4)2](ClO4)2.Me2CO}n (3)が得られた。錯体3は錯体1および2とは異なり,Cu(I)イオンにはbiqzの2個のN原子と1分子のC2H4が配位し,さらにこのCu(I)イオンが別のbiqzにより橋かけされることより,一次元ジグザグ鎖構造を形成していることを明らかにした。 このように対アニオンの異なる前駆体を用いることにより,アニオンおよび合成溶媒選択的にCu(I)配位高分子の構造制御が可能であることを実例で示した。
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