研究課題/領域番号 |
23550087
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
石田 晃彦 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20312382)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 電気化学検出 / くし形電極 / 微小電極 / チップ分析 / マイクロ流体 |
研究概要 |
単一くし形電極は,短冊状の微小電極を等間隔で配列し,各電極の一端を連結することで形成される作用電極で,液体クロマトグラフィーのようなフロー系で機能するものである。本電極は,適当な間隔で配列すれば,電極数に比例して電流値とS/N比の両者が増大するため,電極面積を大きくすることで逆にS/N比と検出感度が低下する従来の短冊状電極の問題を解決するものである。2対のくし形電極を交互にかみ合わせ,酸化還元サイクルを利用する交互くし形電極とは原理的に異なる。本年度の目的は,高い感度を与える電極デザインの設計指針を得ることである。本検討のため,単一くし形電極を備えた微小流体ベースのフローセルデバイスを作製した。真空蒸着法およびフォトリソグラフィーによりポリスチレン基板表面に金薄膜電極を作製し,ソフトリソグラフィーにより,微小流路を持つポリジメチルシロキサン(PDMS)チップを作製した。これらをPDMSがもつ粘着性を利用して接着することによりフローセルデバイスとした。1)電極形状パラメーター 微小電極の幅,電極間の間隔を変えた単一くし形電極を作製し,各種流量で電流値を測定した。電流値は電極間隔とともに増加し,一定間隔以上で最大一定値に達した。最大電流値を与える電極間隔は,微小電極の幅とともに減少する一方,流量には依存しなかった。また,単位電極面積当たりの最大電流値は,微小電極の幅の減少とともに増加し,最大電流値の流量依存性は理論モデルに従うことを確認した。2)各電極の面積と設置位置 作用電極と参照電極の距離,参照電極および対電極の大きさを変えて,それらの電流値への影響を検討することにより,電極を限られたスペースに設置するための各電極の位置と面積を感度の観点から決定した。以上から,電流値の電極形状および流量への依存性を明らかにし,これまでの成果と合わせて電極デザインの設計指針を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当年度の目標は,本電極の感度への影響因子を詳細に検討することにより,最も好適な電極デザインと電極の配置方法を明らかにすることにあることから,上述したように本目標はおおむね達成されたといえるため。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,研究計画調書に従い,フローセルの流路形状を検討したのち,これと単一くし形電極を組み合わせたフローセルの性能評価(検量線の傾きと直線範囲,検出限界など)を行う予定である。また,従来,高感度な検出器とされるウォールジェト式フローセルとの比較も行う。さらに,性能を定量的に検討するうえで重要となる再現性についても確認する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度に使用する予定の研究費は,電極の材料である金とフォトレジストの購入に充てる予定だったものである。当該研究費が発生した理由は,経費支給が2段階になったこともあり,かなり節約しながら使用し,研究室の在庫で間に合わせたためであるが,いずれも当年度で在庫がなくなったため,次年度にこれらの購入の一部に充てる予定である。また,次年度は,フローセルデバイスの材料(電極材料として金,フォトリソグラフィー用試薬,各種チューブ・継手,ポンプ消耗部品など),性能評価に用いる試薬,一般実験器具などの消耗品費および本研究にかかわる情報交換や研究成果発表のための旅費として使用する予定である。
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