研究課題/領域番号 |
23550088
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研究機関 | 北見工業大学 |
研究代表者 |
兼清 泰正 北見工業大学, 工学部, 准教授 (40435748)
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研究分担者 |
青木 寛 独立行政法人産業技術総合研究所, その他部局等, 主任研究員 (00392580)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ボロン酸 / 糖 / センサー / 交互吸着 / 薄膜 / 色素 |
研究概要 |
ボロン酸を用いた糖検出チップの応答速度向上を図るため、交互吸着法による薄膜の作製を検討した。交互吸着法は、基板をポリマー溶液に繰り返し浸漬するだけの簡便な操作により、厚みがナノスケールで制御された薄膜を得られる手法である。まず、ボロン酸モノマーおよびアミンモノマーを共重合して、ボロン酸含有ポリカチオンを合成した。ポリアニオンとしてはポリアクリル酸を用いた。ポリカチオン溶液とポリアニオン溶液をそれぞれ用意し、ガラス基板をこれらへ交互に浸漬するプロセスを繰り返し、交互吸着膜を作製した。形成された薄膜の断面を走査型電子顕微鏡により観測したところ、膜厚が約1マイクロメートルであることがわかった。これは、我々が従来作製していた薄膜の十分の一程度の厚みであり、交互吸着法を用いることによって膜厚を大幅に減少させることに成功した。その後、アニオン性色素を含む水溶液に薄膜を浸漬し、種々の色調に着色した。 得られた糖検出チップを種々の濃度のフルクトース水溶液に浸漬し、一定時間経過後、可視吸収スペクトルの測定により薄膜の色調変化を観測した。その結果、アニオン性色素が糖に応答して膜外へ急速に脱離し、10分程度で薄膜の変色がおおむね完了することがわかった。これは、従来1時間程度を要していた応答時間を大幅に短縮するものであり、膜厚の減少が応答速度の向上に繋がることを実証する結果となった。薄膜の色調は、フルクトース濃度に応じて有色から無色へと変化したことから、短時間で明瞭な色調変化を示す糖検出チップとして機能することが明らかになった。また、色素ごとに異なる糖濃度領域で変色が生じるため、色素の選択によって検出感度をコントロール可能であることも示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
糖検出チップの応答速度を向上させるためのアプローチの一つとして、交互吸着法による薄膜の作製に取り組んだ。その結果、従来より膜厚を大幅に減少させた薄膜の作製に成功し、得られた糖検出チップが糖に対して迅速に応答することを確認できた。以上のことから、本研究はおおむね順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
交互吸着法を用いる手法について、ポリマーのモノマー組成や薄膜の膜厚を変化させた実験を行い、糖検出チップを作製する条件の最適化を図る。また、別のアプローチとしてポリマードットの形成による方法についても検討を開始する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
設備備品費は、ガスクロマトグラフ用のオートインジェクターの購入に用いる予定である。旅費は、国内外の学会参加や研究打合せのために使用する。消耗品費は、試薬やガラス器具などの購入に用いる。「次年度使用額」は少額であるが、消耗品の購入に充当する予定である。
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