前年度,我々の開発した一塩基変異等鎖長DNAのキャピラリー電気泳動分離に基づくSNP検出法を実際に毛髪から抽出したヒトゲノム試料に適用し,そのSNP検出,およびジェノタイピングに成功し,本法が実用的なゲノム診断法であることを見出した.今年度は,実用法としての本法の完成度を高めるため,毛髪からのゲノム抽出やその後のPCR増幅,CE分離に導入するための精製といった実試料の適用には欠かせない試料前処理操作の精査を実施した.特に,PCRについてはプライマーの設計,酵素系の探索を改めて行うと共に,温度や時間,サイクル数と行ったPCR条件についても最適化を行い,前年度に比べてより再現性の高いプロトコルを確立した.また,確立した条件に基づき,本法をいくつかのヒト毛髪試料に適用し,SNP検出,ジェノタイピングを行うことに成功した.一方,本研究計画では,ALDH2領域を含む86塩基長の遺伝子断片をモデル系としてゲノム抽出,PCR,およびCE分離の諸条件を検討してきたが,特にCE分離のための条件として,塩基長が可能な限り短いことが望ましい.そこで,今年度は新たに従来の半分程度の46塩基長のゲノム断片(ALDH2領域を含む)についてPCRやCE分離のための条件についても検討を行った.
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