研究課題/領域番号 |
23550096
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研究機関 | 和歌山大学 |
研究代表者 |
矢嶋 摂子 和歌山大学, システム工学部, 准教授 (80272350)
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キーワード | イオンセンサー / ゲル化剤 / メソポーラスシリカ / 超分子構造 / センサー性能 |
研究概要 |
本研究では,イオンセンサーの感応膜材料として超分子構造を形成する材料を用いて,これまでにない性能をもつ新規イオンセンサーの開発を目指している。 1.メソポーラスシリカを用いるセンサー 昨年度に引き続き,様々な環サイズをもつクラウンエーテル誘導体(12-クラウン-4,15-クラウン-5,18-クラウン-6)をメソポーラスシリカ(MCM-41,配向性材料)に化学結合したものをイオン感応膜として用い,選択係数を求めた。また,従来のゾル―ゲル感応膜(配向性をもたない材料)に同じイオノフォアを化学結合した膜も作製し,選択性について比較したところ,全く異なるイオン選択性を示すことがわかった。また,これらのイオン感応膜について,元素分析によりクラウンエーテルの修飾について検討した。固体NMRも測定し,クラウンエーテルが修飾されていることを確認した。さらに,界面活性剤の種類を変化させたメソポーラスシリカ(SBA-15)についても検討を開始した。 2.ゲル化剤を用いるセンサー 昨年度検討した1分子にアミド結合部位を2つ含む化合物について,o-ニトロフェニルオクチルエーテル(NPOE)のゲルを作製し,ゲル状態とゾル状態のIRスペクトルを測定したところ,C=O(アミド基由来)のピークがシフトした。さらに,ゲル化膜の状態について検討するために,テラヘルツ分光測定を行った。セルの形状を工夫して膜厚のコントロールすることで良好なスペクトルを得ることができた。また,金属イオン(リチウム,ナトリウム,カリウム)とゲル化剤との相互作用について,溶液状態でNMR測定行ったところ,電位応答とは異なる傾向を示すことがわかった。水酸基をもつゲル化剤についてもゲル化能を検討後,NPOEのゲルを作製し,センサー性能を調べているが,現在のところ再現性のある結果は得られていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ゲル化剤を用いるイオンセンサーについては,おおむね計画通りに進んでいる。しかし,メソポーラスシリカを用いるイオンセンサーについては,膜作製のために,これまで使用していた多孔性のアルミナ薄膜が,発売中止で入手できなくなったため,粉末状のメソポーラスシリカを感応膜にする手法について検討しており,計画よりも遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
特に,メソポーラスシリカを利用するイオンセンサーについては,計画よりも遅れてはいるものの,計画に問題があったわけではないので,当初の計画そのものを大きく変更する必要はないと考えている。ゲル化剤を用いるイオンセンサーについては,計画通りに行う予定である。来年度は最終年度なので,遅れを取り戻せるように努力し,目的であるイオン感応膜の構造とイオンセンサー性能との関係について,知見が得られるようにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
1.メソポーラスシリカを用いるセンサー 本年度,非イオン性界面活性剤を用いて作製したSBA-15にイオノフォアを化学結合させることを検討してきたので,それを用いてイオン感応膜を作製し電位応答測定およびイオン選択性について検討を行う。得られた結果をMCM-41の場合と比較することで,メソポーラスシリカの構造の違いがセンサー性能に及ぼす影響について検討する。さらに,分光学的な手法を用いて,得られた結果を検証する。 2.ゲル化剤を用いるセンサー 本年度は,新しくテラヘルツ分光測定を行い,データを得ることができた。その詳細な検討については今後行う予定である。さらに,今まで良好な画像が得られていないSEM観察についても行う。また,水酸基をもつゲル化剤について,電位応答測定を行い,官能基の違いによるセンサー性能の違いについて検討する。さらに,当初の計画には入れていないが,その他の官能基(尿素部位)を含むゲル化剤についても同様の検討を行い,感応膜の構造とイオンセンサーの関係について知見を得る予定である。
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