本研究では,イオンセンサーの感応膜材料として超分子構造を形成する材料を用い,これまでにない性能をもつ新規イオンセンサーの開発を目指している。 1.メソポーラスシリカを用いるセンサー これまで,臭化セチルトリメチルアンモニウムを鋳型として作製したメソポーラスシリカ(MCM-41)をアルミナ薄膜の細孔内に形成し,センサー性能を検討していたが,アルミナ薄膜を使用せずにイオン感応膜を作製する方法を検討した。その結果,粉末状のメソポーラスシリカ(18-クラウン-6誘導体化学結合型MCM-41)を可塑化ポリ塩化ビニル膜に添加して作製したイオン感応膜が,カリウムイオンに対して,アルミナ薄膜を使用した場合と同様のセンサー性能を示すことがわかった。また,非イオン性界面活性剤(Pluronic P-123)を用いて作製した,より細孔径の大きなメソポーラスシリカ(SBA-15)に18-クラウン-6誘導体を化学結合したものをイオン感応物質として使用した場合,カリウムイオンに対する感度が低かった。これより,メソポーラスシリカの細孔径がセンサー性能に大きく影響を与えていることが示唆された。 2.ゲル化剤を用いるセンサー 尿素部位を含む低分子ゲル化剤を使用したo-ニトロフェニルオクチルエーテル(NPOE)のゲルを用いてセンサー性能を検討したところ,アミド基を含むゲル化剤とは異なり,カチオンに応答せず,アニオンの種類によって様々な負の応答を示した。また,アミド部位を含むゲル化剤とNPOEからなるゲルの構造を調べるため,IRスペクトルの温度変化を測定した。アミド基由来のピークがゲル状態で低波数側にシフトし,さらに,ゲル状態においてのみ観察されたピークもあった。このことから,ゲル状態ではゲル化剤同士が強く束縛されており,それにより生じた超分子構造がセンサー性能に影響を及ぼしていることが示唆された。
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