研究課題/領域番号 |
23550098
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
石岡 寿雄 九州大学, 総合理工学研究科(研究院), 助教 (60304838)
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キーワード | 小角X線散乱 / イオン液体 / ポルフィリン / 光増感反応 |
研究概要 |
本研究は,イオン液体/ポルフィリン系において,光増感反応が高効率に推進するメカニズムを解析することを目標にしている.2012年度においては,光照射を行わない状態におけるイオン液体中におけるポルフィリンの凝集体構造を最終決定することを目的とし,ポルフィリンが溶解したイオン液体について小角X線散乱の測定を行うことによりポルフィリンのイオン液体中における構造を解析した. イオン液体溶液における小角X線散乱を測定するため,新規に溶液部分をカプトン膜ではさみ,封入可能な構造のセルを作成し,イオン液体試料を封入した.佐賀県立九州シンクロトロン光研究センターにおける九州大学専用ビームラインにおいて,波長0.13806 nm(CuのK吸収端)のX線をの中心部に照射し,得られる散乱をカメラ長2700 mmにおいて設置されたイメージングプレート検出器により測定した.同時にイオンチャンバーにてX線の強度を計測し,ポルフィリンを含まない試料をバックグラウンドとしてX線の強度を補正した差分をとることにより,ポルフィリン構造体にのみ由来するX線散乱データを得た. ポルフィリンのイオン液体(硝酸エチルアンモニウム)溶液について得られた結果をもとに散乱べクトルをプロットすると良好に円盤状の構造物の解析関数にフィットすることが可能であった.この結果は,直径600 nm, 厚み130 nmの円盤状と一致した.以上の結果はポルフィリン分子のイオン液体中における構造を実験的に明確に示した初めてのものである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
イオン液体中において光増感反応の起点となるポルフィリンの構造を決定するため,測定手段として小角X線散乱を用い,該当年度中に構造を最終決定できた点に関してはおおむね順調であると言える.また温度調整用のセル等の準備や光照射系の準備も進んでおり,測定システムに関しては順調に進行していると言えよう.しかしながら,佐賀県立九州シンクロトロン光利用研究センターにおける九州大学専用ビームラインの利用者の増加により,必ずしも十分なマシンタイムが確保できない状況が実際の実験における進捗が充分でない要因となり,光照射下におけるポルフィリン凝集体構造の変化の有無など,動的な構造解析への展開については若干進捗状況が遅れている.
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度も引き続き小角X線散乱測定を主たる計測手段として,イオン液体中に溶解したポルフィリンによる光増感反応の反応機構を解明することを目的とする.今年度は前年度までに作成した温度調整が可能でかつ光照射が可能な測定セルを用い,ポルフィリンによる光増感反応を進行させながらポルフィリンの構造がどのように変化しているかをX線散乱を解析することにより明らかとする.実験は佐賀県立シンクロトロン光研究センターにおける九州大学専用ビームラインを用い,第一期から第三期にわたって実験日の申請を行うことにより年間80時間程度のマシンタイムを確保する予定である.同時に研究室設備である動的光散乱測定システムを用いることによりポルフィリンの粒径分布を別測定からも求め,データの信頼性を検証する.
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次年度の研究費の使用計画 |
光照射設備として光学系(レンズ,ファイバー等)を購入する,他に温度調整用の機材として,温度調整ユニット等,若干の設備備品を利用する.消耗品として,主にイオン液体の合成に用いる試薬やキャラクタリゼーションに用いるNMR溶媒を用いる他,X線照射の窓板として用いるガラス,カプトン窓などに費消する.シンクロトロンの利用費はできる限り九州大学シンクロトロン光利用研究センター内部の利用課題に応募することにより研究費による支出を避ける予定であるが,採択件数が限られているため,実験に必要な時間数が採択されない場合には本研究費より支出する.その他,研究成果発表費用等に用いる.
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