研究課題/領域番号 |
23550099
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
鄭 文玉 (池田義孝 文玉) 佐賀大学, 医学部, 教授 (60252657)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 糖鎖 / フコース転移酵素 / 糖転移酵素 / 糖鎖構造 / 糖ヌクレオチド |
研究概要 |
糖鎖は糖転移酵素群の高い基質特異性によって生合成される。本研究は、糖転移酵素による糖転移反応の逆反応に基づいた構造特異的分解を検討すること、またこのような逆反応を糖鎖構造の決定に利用することが目的である。すなわち、試験管内で糖鎖生合成を逆行させるという逐次分解法を検討し、新たな構造解析のベースとなりうるような糖鎖の高特異性逐次分解反応を確立する。平成23年度は、糖タンパク質のアスパラギン結合型(N型糖鎖)のコア構造の形成に関与するα1,6フコース転移酵素(FUT8)について、逆反応を有利に進めるため逆反応生成物であるGDP-フコースを分解する系についての検討を行った。GDP-フコースの加水分解活性をもつと報告されている大腸菌GDP-mannose mannosyl hydrolase (GDPMH)をpET28ベクターを用いてT7プロモーター制御化で大腸菌BL21(DE3)に株を用いて発現させた。誘導後細胞を回収し電気泳動によって組換えタンパク質を確認したところ、全タンパク質の20-30%の高レベルで発現させられることがわかった。pLys株でも同様の検討を行ったが発現量にほとんど差はなかった。ニッケルキレートクロマトグラフィーにより組換えタンパク質を精製してみると、300 mLの培養スケールからほぼ均一なタンパク質を50 mg得ることが出来た。これを用いてFUT8によるフコシル化糖鎖からのフコース除去反応に及ぼす効果を検討した。その結果、フコースの除去率は確かに上がっていることが確認された。しかし、現在のところ、合成-分解の平衡が顕著に分解側へシフトしたという結果は確認出来ていないのでこの点をさらに定量的に評価するとともに、平衡に影響を与える要因についてさらなる検討を行う必要があると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた検討はほぼ順調に行うことが出来た。実験結果としてはポジティブではあったものの、効果的な反応を実現するためにはまだ検討の余地は残されている。
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今後の研究の推進方策 |
検討・解決すべき点としては、糖転移酵素活性の至適条件と糖ヌクレオチド加水分解酵素の至適条件がかなり異なること、また後者に必須な2価金属イオンとヌクレオチドのキレート効果がどのように影響を及ぼしているか、などいくつかすでに上がっており、酵素のエンジニアリングも含めてさらに検討していく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の計画通り主として消耗品に使用し、機器や高額物品への使用予定はない。また、研究の進展に応じて、学会発表旅費および論文校正等の費用にも一部使用する。
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