研究課題/領域番号 |
23550100
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
肥後 盛秀 鹿児島大学, 理工学研究科, 教授 (10128077)
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研究分担者 |
吉留 俊史 鹿児島大学, 理工学研究科, 准教授 (60253910)
満塩 勝 鹿児島大学, 理工学研究科, 助教 (70372802)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 蒸着アルミニウム薄膜 / 表面形態 / 形態制御 / 走査型電子顕微鏡 / 交流インピーダンス法 / 電解コンデンサー / SPRセンサー / エタノール添加ガソリン |
研究概要 |
本研究ではアルミニウム薄膜において,真空蒸着法を用いて,基板から直立し孤立した円柱状の微細構造であり,大きな表面積を持つ薄膜を作製する技術を開発する。応用研究として,この技術を用いて電解コンデンサーや触媒などの機能素子のモデルを作製し,電子産業や化学工業における新規金属薄膜材料の作製方法として貢献する。またアルミニウム薄膜における表面プラズモン共鳴(SPR)現象を用いる新しい屈折率センサーを作製し,分析化学における新規化学計測法の開発にも貢献する。 チタン,ステンレス,タングステン,モリブデン,ニッケル,銀,銅,アルミニウム基板上に,500℃においてアルミニウム薄膜を作製し,走査型電子顕微鏡(SEM)を用いてその表面を観察した結果,基板の金属の種類により固有の表面形態を持つことを明らかにした。アルミニウム基板上においては,目的とする孤立した粒子形態の薄膜を作製することができた。 交流インピーダンス法を用いて,硫酸ナトリウム水溶液中の電気二重層の容量を測定し,平坦なアルミニウム薄膜と比較することにより,粒子形態のアルミニウム薄膜の表面積を求めた。その結果,460~520℃で膜厚75~300 nmの蒸着条件において,アルミニウム薄膜の表面積が平坦な場合の約2.6倍になることが分かり,電解コンデンサーのモデル実験として意義がある。 ガラス棒の表面にアルミニウムを7~70 nm蒸着し,光源に発光ダイオード(LED),検出器にフォトダイオードを用いるSPRセンサーシステムを作製し,液体試料の屈折率変化に対する応答変化を測定した。アルミニウムは金や銀と異なり赤外から紫外までの広い波長範囲の光に応答し,LEDを選択することにより分析対象に最適の応答特性を持つセンサーシステムを開発することができる。ガソリン中のエタノールの濃度センサーとしての利用に関する予備実験を行い,良好な結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各種金属基板上に500℃においてアルミニウムを真空蒸着することにより,金属基板に特徴的な表面形態を持つアルミニウム薄膜が得られることを明らかにした。アルミニウム基板においては目的とする表面積の大きな孤立した粒子形態の薄膜を作製することができた。また交流インピーダンス法を用いて,その表面積の増加率を与える蒸着条件を決定することができた。これらの研究成果については特許として出願し,日本分析化学会第60年会において発表した。 アルミニウム薄膜を用いるガラス棒SPRセンサーの応答特性を,金や銀薄膜を用いる同センサーと比較することによって,アルミニウム薄膜のSPRセンサーとしての特徴を明確にした。この新規センサーの工業的な利用について,ガソリン中のエタノールの濃度測定が可能なことを実証した。これらの研究成果についても,上記の学会において発表した。
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今後の研究の推進方策 |
室温において上記の各種金属基板上に真空蒸着したアルミニウム薄膜は平坦な表面形態である。いったい何度の温度から各金属基板に特有の表面形態を持つアルミニウム薄膜が形成するのかを明らかにする。 アルミニウム基板上に500℃において真空蒸着により作製した孤立した粒子形態の薄膜の表面に存在する酸化物(アルミナ)の化学組成や膜厚をX線光電子分光法(XPS)を用いて研究する。 エタノール添加ガソリン中のエタノール分析のためのアルミニウム薄膜ガラス棒SPRセンサーのアルミニウム薄膜の膜厚や光源の波長などのセンサーの条件を検討して,最適条件を決定する。またこのセンサーの安定な長期繰り返し使用を可能にするためのアルミニウム薄膜の表面処理についても検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
真空蒸着装置の維持管理に必要な各種真空部品と蒸着金属薄膜作製のための各種金属を購入予定であったが,既存のもので対応することができたため,未使用金が発生した。次年度の研究費に未使用金を加えて使用し,真空蒸着装置の維持管理に必要な各種真空部品と蒸着金属薄膜作製のための各種金属を購入する。 アルミニウム薄膜表面の形態観察と状態分析のためにSEMとXPSの利用料金が必要である。アルミニウム薄膜ガラス棒SPRセンサー作製のための各種試薬や化学実験器具,また計測システム作製のための各種電子部品を購入する。研究成果を日本分析化学会第61年会において発表するために旅費が必要である。研究補助とデータ処理のための学生への謝金も計上した。研究成果を英文の学術論文に出版するための経費が必要である。
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