研究課題/領域番号 |
23550101
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
高山 光男 横浜市立大学, 生命ナノシステム科学研究科, 教授 (10328635)
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キーワード | 水素ラジカル / オゾン / ビラジカル / 活性化学種 |
研究概要 |
水素ラジカル発生装置の完成に向け、空気成分のラジカル化とその反応生成物の確認を行った。すなわち、設置した紫外ランプの波長から、酸素と窒素、および微量水蒸気の共有結合の分解の可能性を確認し、主としてオゾンが発生していることを確認した。次いで、オゾンの大気中への移動管を、大気圧イオン源に導き、生成した大気イオンと大気由来中性化学種と反応させた。結果、水素ラジカル発生装置の前段として、オゾン発生装置を組み上げることで、大気中でのラジカル関与の反応を追跡することが可能となった。本装置を水素ラジカル発生に転換するために、安全性と可能な反応生成物を考慮し、今後、窒素と水素の混合気体を用いることを検討した。 これまでの具体的な実績として、大気圧コロナ放電装置をイオン源とした正負イオン種の同定およびその化学組成の推定を行ってきた。その結果、負イオン種として酢酸関連イオンの生成を確認したが、その反応性から酢酸ではなく、類似の構造を有するビラジカル種であることが推定された。本ビラジカル負イオンの生成が、大気圧下でのコロナ放電による生成物であるオゾンを介して生成することが推定されたことから、上記で組み上げたオゾン発生装置用いてコロナ放電場に吹き付けたところ、酢酸類似の負ビラジカルイオンの生成が上昇した。このイオン種をアミノ酸を中心とした有機分子と大気中で反応させたところ、有機分子からの水素引き抜き反応が確認された。本反応は、有機分子の構造依存性があることから、その反応機構について検討し、成果を論文にするべく準備中である。これらの成果とオゾン発生装置の基礎実験の結果を、今後、水素ラジカル発生器に転換することで、大気中での水素ラジカルの反応性の研究につなげる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大気中での水素ラジカルの反応性を調べるために、まず、同様の活性化学種であるオゾン発生装置を組み立てた。本装置は、導入気体を空気から水素に変えるだけで水素ラジカル発生装置に転換できると考えているが、紫外ランプの性能と生成する活性化学種の同定と反応性十分に調べることができた。また、アミノ酸を中心とした有機分子の気体を大気中でオゾンと反応されることで、有機分子から水素引き抜きを行うビラジカル負イオンの生成を確認することができた。本反応は、酸化反応であるため、今後、水素ラジカルを発生させることで、水素付与の還元反応が起こることを予測させる結果が得られたと考える。装置の組み上げに関しては十分な成果を上げたので、計画は順調であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
水素ラジカルの発生を大気中で実施するために、安全性を十分考慮した供給ガスの選択を行ってゆく。すなわち、不活性ガスである窒素をマトリックスとした水素ガスの混合ガスを準備し、水素ラジカル発生装置に転換してゆく予定である。その上で、オゾン関与の反応に比べて極めて情報の乏しい水素ラジカル関与の反応を、構造既知の気体分子と反応させることにより、その機構に注目して調べてゆく。
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次年度の研究費の使用計画 |
水素ラジカル発生装置を完成するために、現行のオゾン発生装置に使われているテフロン性反応管や冷却水循環装置の部材の見直しを行い、適切な反応管の選択と部材の選択を行い、それら装置材料の調達を行う。また、各種混合比の水素ガスボンベと微量流束バルブを調達する。
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