研究課題/領域番号 |
23550104
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
橋本 剛 上智大学, 理工学部, 助教 (20333049)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 分子認識 / 神経伝達物質 / 錯体化学 / 電気化学 / 近赤外光 / ルテニウム |
研究概要 |
研究の目的は、「生体関連分子を認識して、近赤外領域で応答する金属錯体センサーを開発する」ことである。具体的には、カテコールアミンを認識して混合原子価状態に由来する近赤外光を吸収する架橋部を持つ(β-ジケトナト)ルテニウム二核錯体を合成し、その機能評価を行うことである。 研究初年度である平成23年度は、分子認識部位を持つ架橋配位子とルテニウム錯体の合成、認識部の最適化を目指して研究を開始した。分子設計の段階ですべてを最適化することは難しいため、カテコールアミンの1つであるドーパミンの分子認識部位の設計と、近赤外領域にシグナル応答ができる(β-ジケトナト)ルテニウム錯体の合成に分けて研究を行うことにした。 最初に、ドーパミンの認識を目的として、アミノ基を認識できるクラウンエーテルとシスジオールを認識できるフェニルボロン酸の両方を持つアゾ化合物を合成し、そのドーパミンに対する特異な認識応答を確認することができた。また、アミノ基の分子認識部位に関しては、アルデヒドやクラウンエーテルよりも応答性の高い置換基の導入を検討している。 続いて、アルカリ金属イオンやアミノ基を認識することができるクラウンエーテルをルテニウム錯体に導入することを考え、クラウンエーテルを持つ安息香酸誘導体で架橋した二核錯体を2種類合成した。この錯体について、アセトニトリル溶液中で5種のアルカリ金属イオンに対する応答を調べたところ、分光学的測定と電気化学的測定が一致する結果を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画では、本年度中に分子認識部位を導入した錯体の評価を終えることになっていたが、実際には合成およびその後の精製が困難で分子設計をやり直す必要が生じてしまった。また、配位子単独によるドーパミン認識でも、分子認識部のデザインについて考察をする必要が生じた。しかし、ドーパミンに対して応答を示す化合物の分子設計については一定の成果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度の結果をフィードバックし、分子認識部を2箇所持つルテニウム二核錯体を合成する。分子認識により二核間相互作用に変化が起こるかを調べ、系の最適化を図る。最適化の具体的方法は以下の3点により行い、目的とする機能発現のための、分子認識設計指針の確立を図る。(1)β-ジケトナト配位子の置換基の最適化による溶解性の向上、酸化還元電位の制御(2)分子認識部と架橋基とを結ぶアリール環への置換基導入、および分子認識部位の位置制御(3)測定条件の検討(酸化状態の違うどの混合原子価状態を用いるか)平成23年度の残額(次年度使用額)は1000円未満であり、これに限った研究使用用途は特にない。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初計画に沿って進める予定である。薄層電解セルをはじめとするガラス器具類や、電気化学測定のための各種消耗品や装置のメンテナンス、化合物合成のための各種試薬(原料となる塩化ルテニウムや配位子材料の有機試薬)溶媒、カラム充てん剤等、消耗品を中心とした支出になる予定である。また国内学会(日本分析化学会年会、錯体化学会討論会)での中間成果発表および情報収集、実験補助者への謝金なども支出予定である。
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