研究課題
研究の目的は、「生体関連分子を認識して、近赤外領域で応答する金属錯体センサーを開発する」ことである。具体的には、ドーパミンなどのカテコールアミンを認識して、同一分子内同種金属の酸化数の違いにより発生する混合原子価状態に由来する近赤外光を吸収する二核ルテニウム錯体を合成し、その構造評価を行うことを目的としている。最終年度となった平成25年度は、1)アミノ基に対する親和性の高い分子認識部位の再検討、2)糖(シスジオール)認識部位の新たな分子設計、3)分子認識部位と架橋配位子の結合方法に関する分子設計の検討、の3点を中心に行った。以下に結果を示す。1)新規な分子設計として、金属配位ジピコリルアミノ基のアミノ基に対する認識について検討した。ジピコリルアミン亜鉛錯体では、アミノ基の存在によってリン酸誘導体類に対する応答が顕著に変化し、後述する2)のフェニルボロン酸基と合わせ、ドーパミンのジトピック型認識の可能性が広がった。2)上記のジピコリルアミン誘導体をフェニルボロン酸とをアゾカップリングにより組み合わせることで、新しい応答原理を持つ分子認識系の構築に成功した。3)応答感度向上のためには、分子認識部位と中心金属が同一平面上にあることが分子指針上有用である。この効果を厳密に評価するため、分子認識部位の置換位置のみが互いに異なる二種のルテニウム新規錯体の合成を試みた。昨年度は合成不可能だったヒドロキシナフチルボロン酸の入手に成功し、これを基に糖認識部位をルテニウム配位平面上に有する(β-ジケトナト)ルテニウム錯体の合成に成功した。この錯体は弱いながらも近赤外領域に吸収を持つことがわかり、可視部の吸収帯との吸光度比を基に精度よく単糖類を認識できることが分かった。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (14件) 図書 (1件)
Chem. Lett
巻: 43(2) ページ: 228-230
10.1246/cl.130902
Analytical Science
巻: 30 ページ: in press
J. PhotoChem. PhotoBiol., B
巻: 130 ページ: 205-216
10.1016/j.jphotobiol.2013.11.008
J. Coord. Chem
巻: 66(22) ページ: 4052-4066
10.1080/00958972.2013.858135