研究概要 |
パーキンソン病(Parkinson's Disease ; PD)は、アルツハイマー病(Alzheimer Disease ; AD)に次いで、罹患率の高い神経変性疾患である。PDの原因遺伝子産物の一つにα-synucleinがあり、これまでの研究結果より、α-synucleinのアミロイド線維化や中間体オリゴマー形成が神経細胞死と密接に関連することが予想されいてる。本研究課題では、α-synucleinのアミロイド線維生成過程を分析する手法の確立に焦点をあてて、研究を遂行した。分析手法として,CD、ThT蛍光、フーリエ変換質量分析、核磁気共鳴スペクトルおよびゲル濾過カラムクロマトグラフィーを用いた。特に,アミロイド線維化の初期課程における,ドパミンの影響を分子レベルで解析した。 フーリエ変換質量分析からは、1分子のα-synucleinに対して、3分子のドパミンが結合することが判明し、分子レベルで複合体の形成が明確になった。ゲル濾過カラムクロマトグラフィーによる解析では、ドパミンの存在下により、オリゴマーと考えられる高分子集合体の形成が促進されることが観測された。野生体のみならず、染色体優性遺伝子変異体(A30P,E46K,A53T)においても、同様にオリゴマー形成の促進が確認された。最近の研究において,α-synucleinのアミロイド線維形成がドパミンによって抑制されるとの報告があるものの、明確になっていなかった。本研究課題におけるThT蛍光による解析より、ドパミン存在下ではアミロイド繊維形成が顕著に抑制され、また、β-sheet含量は変化しないことがCDより判明した。以上より、ドパミンがα-synucleinと相互作用し、α-synucleinのアミロイド繊維形成を抑制しつつも、オリゴマー形成促進効果を有することが明確になった。
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