研究概要 |
平成23年度に得られた結果を基にして、平成24年度は以下の研究を遂行する。 (1)計算化学からの検討:Arisは、キャピラリーチューブ内を、層流条件下で溶質が流れるとき、溶質の2次モーメントから溶質の分配にかかわる式を導いた(Aris, R. Proc. R. Soc. Lond. A 1959, 252, 538-550)。申請者は、Arisの式から、さらに、溶質の分散および理論段相当高さを表す式を独自に導いた。内壁に固定層を持ったキャピラリークロマトグラフィーにおける理論段相当高さを表す式である。この式を用いて「管径方向分配クロマトグラフィー」における相形成に関するシミュレーションを実行した。コンピュータシミュレーションから得られた溶媒挙動は、実験観察結果と良く一致した。このことは、「管径方向分配現象」を理論的にサポートする結果となった。 (2)分析対象物の拡張:これまで、低分子の有機化合物を中心に分析し、「管径方向分配クロマトグラフィー」の分離性能を調べてきた。24年度には、さらなる実験、理論面からの考察を深め、分析対象物の拡張を検討した。有機化合物の他に、アミノ酸、タンパク質、ヌクレオシド、DNA、糖質、金属イオン,金属錯体,ヘムタンパク質,光学異性体等を、分離、検出することができた。分析システムは、中空キャピラリーチューブ、マイクロシリンジポンプ、および検出器からなり、極めて簡単な装置として組み立てることができた。
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