申請者は、微小空間におけるマイクロ流体の新たな特異的な流体挙動を見いだした。水-親水性/疎水性有機溶媒の三成分混合溶液を、マイクロチャネルやキャピラリーチューブに送液すると、溶媒分子が管径方向に分配する。すなわち、溶媒分子が管径方向に対して内側(管中央部)にinner phaseを、外側(内壁近傍)にouter phaseを形成し、相分離を引き起こす。この現象を「管径方向分配現象(Tube Radial Distribution phenomenon; TRDP)」と呼び、TRDPの解明に取り組んだ。同時に、TRDPをキャピラリークロマトグラフィーに利用することを提案し、検討してきた。これを「管径方向分配クロマトグラフィー(Tube Radial Distribution Chromatography; TRDC)」と呼ぶ。一連の研究結果に基づき、TRDCの分離メカニズムを説明することができた。管内にinner phaseおよびouter phaseが形成されるが、内壁近傍のouter phaseの移動速度は層流条件下では極めて遅く、擬似固定層としてはたらく。このinner phaseおよびouter phase(擬似固定層)への溶質分子の分配をへて、クロマトグラフィーとしての分離が達成されることが証明できた。TRDCにマイクロTASの概念を取り入れ、マイクロチップTRDCを開発することができた。さらに、「管径方向分配抽出(Tube Radial Distribution Extraction; TRDE)」、「管径方向分配混合(Tube Radial Distribution Mixing; TRDM)」、「管径方向分配化学反応(Tube Radial Distribution Reaction; TRDR)」についても知見を得ることができた。
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