研究概要 |
磁気分離を利用したバイオセンシングの一例として食品中のアレルゲンである小麦、病原菌のモデルとして大腸菌の濃縮を目的とした実試料前処理用のバイオチップの作製を行なった。試作したバイオチップは、アクリル樹脂性でスライドガラスと同等の大きさ(76mm × 26mm)であり、バイオチップ中央に流路(1mm × 1mm)、流路内に磁性微粒子を捕捉する為の流路幅2mm × 10mm、1.5mm × 10mmのトラップゾーンを二カ所設けた構造となっている。このバイオチップを用いてビスケット中のDNAをシリカ磁性微粒子によって分離後、遺伝子増幅(PCR)によって小麦の検出を行なった。その結果、ビスケットに含まれるDNAの分離が可能であり、PCRによってビスケットに含まれている小麦の検出が可能であった。また、抗大腸菌抗体を標識した磁性微粒子とバイオチップを用いて大腸菌を濃縮後にPCRによって大腸菌の検出が可能であった。バイオチップを用いない場合、ビスケット中のDNAの分離、大腸菌の濃縮には遠心分離機を必要とするが、バイオチップと磁性微粒子を用いれば、遠心分離機を使わずに分離、濃縮が可能となる。小麦のDNAの検出では5’末端にFITC(fluorescein isothiocyanate)、Biotinを標識したプライマーを用いてPCR後に抗FITC抗体標識金ナノ粒子を用いて抗Biotin抗体を固定したイムノクロマトテストストリップによる目視での検出も可能であった。実試料前処理用のバイオチップとPCR用バイオチップ(Analyst, 2012, 137, 3422―3426)を組み合わせることによって遠心操作を必要としない前処理が可能であり、迅速可能なバイオセンシングが可能であることを見いだした。
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