研究課題/領域番号 |
23550110
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研究機関 | 安田女子大学 |
研究代表者 |
西 博行 安田女子大学, 薬学部, 教授 (30516852)
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研究分担者 |
永松 久実 安田女子大学, 薬学部, 助手 (80614057)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 医薬品 / 生体分子 / エナンチオマー / キャピラリー電気泳動 / UHPLC / シクロデキストリン |
研究概要 |
本研究では、従来のHPLC法を中心とした医薬品の品質物性評価法にかわり、キャピラリー電気泳動(CE)法、あるいは、より微小な充てんを用いるUHPLC法の、ミクロな系を用いる高性能な高速・精密な医薬品類の品質・物性評価法の開発を検討する。 本年度は、CE法の高分離性能を生かすものとして、医薬品エナンチオマーの分離法について検討した。キラルセレクターとしてデキストリン(Dex)を用い、ジルチアゼム及びその関連化合物、計3種類のエナンチオマーの分離について検討した。製造法の異なる5種類のDexを用いたところ、いずれでもエナンチオマー分離が達成され、15%添加で3種類のエナンチオマーの一斉分離が18分以内で達成された。本法はジルチアゼム製剤の光学純度測定も兼ねた含量均一性試験に適用可能で、日本薬学会第132年会で発表した。 また、9月よりレーザー蛍光検出器を設置したので、高感度なCE法による精密品質評価法開発の基礎検討を開始した。対象にD-アミノ酸を取り上げ、アルゴンレーザーの特性に適したNBD-Fを誘導体化試薬として選択した(励起488nm、検出510 nm)。既報告の条件で誘導体化後、様々なシクロデキストリン(CD)を添加した泳動条件でアミノ酸の高感度DL分離について検討を行ったところ、β-CD、γ-CDが光学認識に有効で、グルタミン酸をはじめ5種類のDL分離が達成された。 UHPLC法による高速化については、薬品分析実習で実施しているODSカラム(15cm、5μm)によるパラベン類の一斉分離について、UHPLC法での分離を検討した。その結果、コアシェル型ODSカラム(10cm、2.6μm)を用いて、2.5分以内にパラベン5種類のベースライン分離が理論段数15000(理論段高さ6μm)で達成され、UHPLCの性能が得られることを確認した。結果については、大学の紀要に発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、キャピラリー電気泳動(CE)法及びより微小な充てんを用いるUHPLC法の、2つの高性能な手法による医薬品の高速・精密な品質・物性評価法の開発を柱に、検討を進めている。 CE法では、様々なキラルセレクターを用いるエナンチオマー分析について検討し、その実用化を目指した。まずキラレセレクターとしてデキストリンを用い、カルシウムチャンネルブロッカーのジルチアゼムとその主不純物アセチル体及びクロロ誘導体の計3種類の一斉エナンチオマー分離について検討した。その結果、15%のデキストリン添加で一斉分離できることを明らかにし、また、実用化法として、内標準物質を用いるジルチアゼム錠の含量均一性試験法を設定した。本手法は、従来法であるHPLC法による試験法と比較して同等以上の精度であり、簡便かつ溶媒を使用しない有用な試験法であることを示すことができた。その他のキラルセレクターについては、系統的な検討はできなかったものの、硫酸化シクロデキストリンがトリメトキノール、デノパミンといった医薬品のエナンチオマー分離に有効であることを確認し、ほぼ計画は進捗した。 レーザー蛍光検出器による糖鎖の精密高感度分離分析法の開発の基礎として、D-アミノ酸の高感度、DL分離について検討し、UV法に比較し、概算で100倍程度高感度に検出されることが示された。 一方、UHPLC法では、実習で実施している分離法について、高速・高性能化の検討を行った。その結果、理論段高さで一桁のμmの値を得ることができ、迅速分析が可能であることを示せ、計画を達成できた。
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今後の研究の推進方策 |
CE法では、キラルセレクターとしてトリメトキノール、デノパミンといった医薬品のエナンチオマー分離に有効であったシクロデキストリンのアニオン誘導体である硫酸化シクロデキストリンにつき、系統的なエナンチオマー分離の検討を行い、その実用化として製剤の光学純度も兼ねた定量法を開発する。また、レーザー蛍光検出器による精密高感度分離分析法の開発については、引き続き、グルタミン酸をはじめ5種類のDL分離が達成された条件の最適化を検討し、高感度一斉分離について検討を進める。他の必須アミノ酸のDL分離についても検討を進める。 UHPLC法では、パラベン類に変わり、総合感冒薬類及び抗炎症剤として汎用されているNSAIDs類の一斉分離について検討を行い、迅速一斉定量法を開発する。更に製剤分析での実用化を検討する。また、これらは中毒物質としてもよく法医学分野で遭遇する薬物であることから、UHPLC法でのこれらの迅速分離分析に加え、高感度測定についても検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、研究費(直接経費)が80万円である。レーザー蛍光検出器での高感度測定のための様々な蛍光誘導体化試薬、測定対象の医薬品、また、キラルセレクターとして用いるシクロデキストリン誘導体等の試薬類の購入に20万円、さらにUHPLCの検討に用いるカラム(8万×4本)と溶媒の購入に40万円、成果を学会発表する旅費(2回)として20万円の使用を計画している。
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