本研究では、従来のHPLC法(充てん剤粒子径5μm、カラム長15~25㎝)を中心とした医薬品の品質・物質評価法にかわり、キャピラリー電気泳動(CE)法、あるいは、より微小な充てん剤を用いるUHPLC法など、ミクロな系を用いる分析法による、高性能な高速・精密な医薬品類の品質・物性評価法につき、3箇年にわたり検討した。 初年度は、CE法の高分離性を生かすものとして、エナンチオマー分離法について検討した。その結果、医薬品ジルチアゼム及びその誘導体の分離にキラルセレクター(CS)としてデキストリンが有効であることを見出し、光学純度測定法を兼ねた製剤の含量均一性試験法を設定した。また、更に高感度なエナンチオマー分析法の開発を目的として、アルゴンレーザー検出器を用いるDL-アミノ酸の分離定量法について検討した。その結果、NBD-F蛍光誘導体化後、CSとしてシクロデキストリンを用いる系でグルタミン酸をはじめ、5種類のDL-アミノ酸の高感度エナンチオマー分離が達成された。 次年度、UHPLC法では、コアシェル型カラムに着目し、総合感冒薬類あるいはNSAIDs類につき、一斉分離法の検討を行った。その結果、いずれのグループも5分以内に低カラム圧で良好に分離され、迅速分析が達成された。また、更にミクロな系として、充てん剤が3μmのキラルカラムを適用し、迅速で高分離なエナンチオマー分離が可能であることを報告した。CE法ではCSとして硫酸化したデキストリン類を用いて、エナンチオマー分離を検討した。その結果、デノパミンなどの医薬品のエナンチオマー分離が可能であることが分かった。 最終年度は、上記の結果につき、追加データを取得して論文を作成し投稿した。また、UHPLC法では更に5㎝カラムの適応やその応用を水溶性ビタミン類、ジルチアゼム類の一斉分離に広げ、いずれも迅速に分離が達成できることを明らかにした。
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