研究課題/領域番号 |
23550111
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研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
廣田 憲之 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, 研究員 (10302770)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 磁気力 / 弱磁性物質 / 可視化 / シミュレーション / 非接触制御 |
研究概要 |
本研究では、物質に対して非接触で力学的影響を与えることのできる磁場の特徴を利用して、物質を遠隔的にマニピュレーションする技術に関する知見を集積することで、流体中における物質挙動を制御し、物質の分離や分析への応用展開を目指す。このために、強磁場下において使用可能な共焦点レーザースキャン顕微鏡等の光学系を用いてマイクロメーター粒子挙動のその場観察を種々の条件下において行ない、その知見を集積する。また、空間磁場設計を計算機シミュレーションにより実施する。平成23年度は、希薄分散液中における弱磁性粒子の挙動の観測、分子動力学法に基づくシミュレーションモデル、及び、直線配列構造を形成するための空間磁場設計について検討した。弱磁性粒子挙動の強磁場下その場観察に関して、試料に対して磁場を印加する方向と直交する方向からの観測を可能とするアタッチメントを試作した。CCD素子と光学レンズ等を組み合わせ、マイクロメートルオーダーの粒子等の挙動をその場観察できるようになった。現在、数種の弱磁性マイクロ粒子を用いて流体中に希薄分散させ、強磁場中を流した際に、流体力学的な効果と磁気力による効果が重畳するケースで粒子の挙動を観測し、粒径や粒子磁性、流速の変化に伴い、異なる挙動を観測している。また、強磁場中で弱磁性粒子に生ずる小さな磁化を考慮し、印加磁場による運動と粒子間に働く磁気的な相互作用を考慮したシミュレーションモデルに熱的な擾乱を取り込み、その検証を進めている。直線配列構造を形成するための空間磁場設計については、生体内での物質配列・挙動の制御を念頭に、ある媒体中の特定の領域に分散する粒子群に対し、超伝導磁石を磁場源とし、媒体の利用により、磁場を導入する方法について検討をシミュレーションにより進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度に予定していた、希薄分散液中における弱磁性粒子の挙動の観測では、磁場印加方向からの高分解能光学的可視化を可能としたほか、分子動力学法に基づいて印加磁場による運動と粒子間に働く磁気的な相互作用を考慮したシミュレーションモデルに熱的な擾乱を取り込むことが可能となったほか、直線配列構造を形成するための空間磁場設計についてもその基本的な指針が得られてきており、当初予定の通りに進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度以降は、23年度に得られた成果をベースに、粒子挙動の観測に関しては、分散質濃度の異なる試料を対象として、観測とシミュレーションによる解析にも取り組む。シミュレーションでは、粒子間の相互作用モデルの高度化を試みる。また、マイクロ流体セルのようなケースでの物質挙動・軌跡の制御について、観測とシミュレーションにより検討する。さらに、粒子挙動の制御に適した空間磁場の設計に関するシミュレーションを引き続き行なう。実験的な知見とシミュレーションを体系的に理解し、整理することで強磁場を利用した弱磁性物質の遠隔的マニピュレーション技術の確立につなげる。
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次年度の研究費の使用計画 |
強磁場中で進行する現象の可視化には、いくつかの困難が伴う。部材に磁性体が使えないため、必ずしも既製の部品が使えない、スペースが限られているため大きな装置は導入できず、また、磁場印加方向に対して直交する方向からの観測は試料の設置スペースも考慮すると光の取り回しも難しい、などの点である。このため、当初は、このような観測を実現する光学系の製作に予算を見込んでいたが、従来から保有していた観測装置を流用し、その一部を、既成の部品を中心に置き換えて利用することで、比較的安価にこれを試作し、所定の実験を達成することができた。今後は、時間・空間分解能のさらなる向上を図ることができれば、強磁場中で進行する現象のより精度の高い解析が可能となり、本研究の進展が期待されるので、23年度に繰り越した予算はこのような装置の試作に充てる。
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