研究課題/領域番号 |
23550111
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研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
廣田 憲之 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, 研究員 (10302770)
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キーワード | 磁気力 / 弱磁性物質 / 可視化 / シミュレーション / 非接触制御 |
研究概要 |
本研究では、物質に対して非接触で力学的影響を与えることのできる磁場の特徴を利用して、物質を遠隔的にマニピュレーションする技術に関する知見を集積することで、流体中における物質挙動を制御し、物質の分離や分析への応用展開を目指す。このために、強磁場下において使用可能な共焦点レーザースキャン顕微鏡等の光学系を用いてマイクロメーター粒子挙動のその場観察を種々の条件下において行ない、その知見を集積する。また、空間磁場分布に関する考察を計算機シミュレーションにより実施する。 平成24年度は、強磁場中で利用できるシュリーレン干渉計を構築し、流体中の濃度分布に起因する屈折率分布を2次元的に検出できるようになった。これを用いて、数種の無機物質の結晶が成長・溶解する過程での結晶周囲の流れの可視化を行ない、磁場の影響を評価した。また、前年度に製作した側方観測系を利用して、マイクロメートルオーダーの粒子を流体中に希薄分散させ、マイクロ流体セルを用いて強磁場中を流したケース、粒子の代わりに気泡を入れ常磁性流体中に空孔が存在ようなケースについて、流体力学的な効果と磁気力による効果が重畳する影響を評価した。粒径や粒子磁性、流速の変化に伴い、それぞれ異なる挙動を観測している。 強磁場中で弱磁性粒子に生ずる小さな磁化を考慮し、印加磁場による運動と粒子間に働く磁気的な相互作用を考慮したシミュレーションでは、粒径が小さくなった時の熱的な効果も含め検証を進めている。直線配列構造を形成するための空間磁場設計については、生体内等での物質配列・挙動の制御を念頭に、ある媒体中の特定の領域に分散する粒子群に対し、超伝導磁石を磁場源とし、ある程度誘導が可能であることがわかった。また、磁性体等の空間的な配置により、均一度が高く磁気力の強い場を比較的広い領域に形成する方法についても検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
強磁場中で利用可能な共焦点レーザースキャン顕微鏡のほか、本研究で開発した側方観測系により流体中の粒子の挙動を磁場と平行・垂直の両方向からの観測を可能とし、また、シュリーレン干渉計によりで、粒子が無くても屈折率の違いで流れを把握できるようになったことで、磁場中での弱磁性物質の挙動に関して多角的な情報を得られるようになった。シミュレーションについては、分子動力学法に基づくシミュレーションモデルに熱的な擾乱を取り込むことが可能になったことで、広範囲の粒子径についての挙動解析ができるようになった。また、直線配列構造を形成するための空間磁場設計についても、磁場の形成法などの指針が得られてきている。また、磁性体等の空間的な配置により、均一度が高く磁気力の強い場を比較的広い領域に形成する方法についても検討を進めており、当初の予定通りに進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、これまでに得られた成果をベースに、各現象について実験の可能な範囲については、実験とシミュレーションの対比を行なう。物質挙動の観測に関して、光学的な可視化と干渉による流れの観測も行ない、強磁場中での多様な条件下での物質挙動について考察する。空間磁場設計については、引き続き、意図する構造形成や物質に対する力学的な効果の制御の視点から空間磁場をシミュレーションにより検討する。実験的な知見とシミュレーションを体系的に理解し、整理することで強磁場を利用した弱磁性物質の遠隔的マニピュレーション技術の確立につなげる。
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次年度の研究費の使用計画 |
強磁場中で進行する現象を高い時間・空間分解能でその場観察できると、より精度の高い解析が可能となり、本研究の進展が期待される。高分解能観測は既に実現し、高時間分解能観測のためのアタッチメント製作に予算を見込んでいたが、フランスのグループとの共同研究でその機能を有する装置を試作できた。今後、先方の研究機関を訪問して、実験を行なうため、繰り越した予算は、その実験実施のための消耗品費や旅費に充てる。
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