合成中間体として有用な芳香族ホウ素化合物の合成法として、炭素-ハロゲンおよび炭素-水素結合の触媒的ホウ素化は、直截的な手法として注目されている。本研究では、前年度から引き続き、これらの炭素-ホウ素結合形成反応について検討を行い、今年度、以下に示す知見を得た。 1.芳香族アルジミン類のオルト位の炭素-水素結合を選択的にホウ素化する反応を見出しているが、2-アリールピリジンもsp2窒素原子への配位を足掛かりとして同様の反応を起こすことを見出した。反応条件のスクリーニングにより、高収率で目的物を与える触媒系を明らかにした。さらに密度汎関数法による計算化学的な検討を加え、これらの反応のメカニズムの解明を行った。反応速度や重水素ラベル実験からも本機構の妥当性が示唆された。 2.パラジウム触媒によるヒドロボランと有機ハロゲン化物のクロスカップリングによる炭素-ホウ素結合形成はよく知られているが、その反応機構は不明な点が多い。密度汎関数法によるメカニズムの提案がなされているが、その機構では説明が難しい事象を見出した。中間体として考えられるパラジウム錯体の単離や密度汎関数法、さらに高精度な分子軌道法により、提案されている機構とは異なる新たな反応機構を見出した。 3.ジアザボロリジンをホウ素化剤として用いた芳香族ヨウ化物の触媒的ホウ素について検討し、パラジウムやニッケル錯体が触媒として働くことを明らかにした。
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