研究課題/領域番号 |
23550119
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
小林 雄一 東京工業大学, 生命理工学研究科, 教授 (90153650)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | アリル化反応 / アリルピコレート / プロパルギルエステル / ピコリン酸脱離基 / 銅試薬 / 芳香族Grignard試薬 / プロスタグランジン |
研究概要 |
我々は第2級アリルエステルと有機銅試薬とのアリル化反応に有効な脱離基としてピコリン酸脱離基 (Py-CO2) を見いだしてきたが,有機銅試薬に用いる銅塩や溶媒によっても反応性や選択性をさらに向上させることが可能になった。以下に,それらの結果について報告する。(1) アリル化反応を使った4級炭素の構築の検討: 立体選択的に合成したR1(R2)C=CHCH(OCOPy)R3と芳香族Grignard試薬由来の銅試薬とのアリル化反応では,これまでのCuBr・Me2Sを用いると低い選択性しか得られなかったが,Cu(acac)2を使うと選択性高く反応した。ArMgBr/Cu(acac)2はアリール基上の立体障害にもさほど影響されなかった。(2) 五員環アリルエステルのアリル化反応の開発(2種類)とこれらの反応を使った生理活性化合物の合成: 五員環アリルピコレートとTMSアセチレン銅試薬との反応は CH2Cl2 溶媒中効率的に進行した。この反応を使ってプロスタグランジンの合成を行った。さらに,五員環アリルアセテートとArMgBr/CuBr試薬とのアリル化反応を選択的に行わせる反応条件を確立した。そしてこの反応を活用して hNK-1アンタゴニストを合成した。(3) プロパルギルピコレートと有機銅試薬との反応の検討: 上述したアリル化反応をプロパルギル系に応用したところ,ArMgBr/CuBr・Me2S はα選択的,ArMgBr/Cu(acac)2 はγ選択的になることを見いだした。この反応の一般性を調べるため,プロパルギルピコレートの置換基と ArMgBr のAr原子団の立体的な影響,電子的な影響を調べた結果,立体的因子,電子的因子にはほとんど影響されなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
なお,6員環上アリルピコレートの場合,RMgBr/CuX の組成が2:1ではラセミ化するが,1:1 の試薬では立体反転で進行した。現在,置換基や銅塩を変えてこの原因を究明している。
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今後の研究の推進方策 |
(1) 平成23年度の研究を引き続き行う。(2) アリル化反応が使える系を探す。(3) RMgBr/Cu(acac)2 試薬は,RMgBr/CuBr と異なる反応性・選択性を示すアリルピコレートをいくつか見いだした。これらの基質に対して様々な銅塩から銅試薬を調製し,反応させてより効率的な系を見いだす。(4) アリル化反応とプロパルギル反応を使って生理活性分子を合成する。
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次年度の研究費の使用計画 |
2012年3月7日に購入した分取カラム (JAIGEL, 金額 567,000円) の支払いが4月にずれ込んだため。試薬,溶媒,分析試薬等消耗品を購入する。
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