研究概要 |
1,3-非対称二置換アリルエステルのPd触媒アリル位アミノ化反応において,アリルエステルの一つの置換基がトリフルオロメチル基であるラセミ体アリルエステルでの反応を行い,光学活性な含フッ素アリルアミンを位置およびエナンチオ選択的に得る事に成功した. 本研究は,これまでのPd触媒アリルエステルのアリル位置換反応ではその反応機構(net retention機構)から不可能である不斉誘起を目指したものであり,過去の反応機構とは異なる反応機構を制御しつつ引き起こし,ラセミ体から光学活性体を得る新しい手法の確立を目指したものである.その結果,トリフルオロメチル基を有する1,3-非対称二置換アリルエステルのPd触媒アリル位アミノ化反応において,不斉配位子をキラルなBINAPとすることで,当初予定した通りにラセミ体からキラルなアリルアミンを高収率かつ高エナンチオ選択性で得る事に成功した.また,本反応は位置選択的にg-体のアリルアミンが生じた後に,分子内でのアミンの転位を伴う反応経路で進行している事.更に,その一段階目の反応はnet retention機構で進行し,続く転位段階においてdynamic kinetic resolution が起こる事でエナンチオ選択性が発現している事を見いだした.また,本反応においてはアミンとして環状および非環状の2級アミンの他に,1級アミンも利用可能である事を確認できた.更に最終年度においては光学活性なアリルエステルによる反応も行い,その反応経路をより明確にする事に成功した. 以上,本研究は当初の予定をほぼ実行する事ができた.
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