研究課題/領域番号 |
23550124
|
研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
是永 敏伸 岡山大学, 自然科学研究科, 助教 (70335579)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | ホスフィン / 配位子 / 電子不足 / 高活性触媒 / 1,2-付加反応 / 不斉アリール化 / 不斉配位子 |
研究概要 |
本申請研究では、超高活性不斉触媒や新タイプの不斉触媒反応の開発を目指し、立体的にかさばらないが強力な電子求引性芳香環を有する新規不斉ホスフィン配位子を開発する。強い電子求引性を有するが嵩高くない 2,6-bis(trifluoromethyl)-4-pyridyl (BFPy) 基をリン上に持つ高度に電子不足なホスフィン配位子 1 を開発した。電子不足な配位子としては高い配位能を有する 1 による金属触媒の電子的制御の有効性を示すため、ロジウム触媒によるアリールボロン酸の1,2-付加反応を行った。 まず、アセトフェノンのような活性化されてないケトンへの1,2-付加反応を行った。これは従来の触媒では進行し難い反応であったが、3 mol%のRh/(±)-1触媒を用いて反応を行うと、1時間で高収率の三級アルコールを得る事ができた。 次に、N-Tsイミンへのアリールボロン酸の付加反応(イミンの不斉アリール化)を行った。この反応は光学活性二級アミンが得られるため大変有用な反応であるが、典型的な触媒の場合、1 mol%以上の触媒量と数時間以上の反応時間を必要とした。それに対しRh/(R)-1触媒を用いると、わずか0.008 mol%の触媒量でも反応は円滑に進行し、一時間辺り一万回転以上も触媒は回転した。またそのときのエナンチオ選択性は95% eeと高いものであった。 配位子 1 と同様に電子不足なパーフルオロアリール基を有するホスフィン配位子を用いて上記二つの反応を行うとほとんど進行しなかった事から、BFPyホスフィン配位子 1 の配位のし易さにより触媒が十分に電子的に制御され反応が加速されたものと考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画通りの配位子を開発できた。開発した配位子はロジウム触媒を高度に活性化し、一部の有機合成反応において過去の触媒を凌駕する触媒活性を示すことができた。この結果は化学系トップジャーナルの一つに掲載され国際的評価も高い。また国内企業から当配位子の売り出しの打診も受けている。
|
今後の研究の推進方策 |
BFPyホスフィン配位子の有用性を調査する。特に、ロジウム以外の金属錯体触媒における配位子効果を調査し、有用な有機合成反応に適用できる触媒を開発する。さらに、有用化合物合成の新規合成法への利用も目指す。
|
次年度の研究費の使用計画 |
本年度は予想よりスムーズに進行したため、想定していた予備実験を行わずに済み、予想を下回る経費で研究を実施できた。次年度は、研究代表者が他大学へ異動するため、これまで用いていた設備や装置・器具などが使用できない。そのため、本年度と次年度の研究費を合わせ、研究に必要な装置や器具などを購入する予定である。
|