研究課題/領域番号 |
23550125
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
嶌越 恒 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00284539)
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キーワード | 可視光応答性 / ビタミンB12 / 酸化チタン / 界面錯体 / 脱塩素化反応 |
研究概要 |
当該年度は、可視光に応答するビタミンB12-酸化チタン複合触媒の開発を行った。可視光応答化の原理として、エンジオール化合物と酸化チタンとの界面錯体形成に基づく可視光応答化を試みた。その結果、ジヒドロキシベンゼンを酸化チタン表面に修飾することで、可視光応答化に成功した。実際にビタミンB12のコバルト錯体が本可視光応答型酸化チタンで還元されるかどうかを確認したところ、トリエタノールアミン存在下420nm以上の可視光を照射すると、酸化チタンからの電子移動が起こり、ビタミンB12が還元されCo(I)種が生成することを確認した。そこで本システムを用いてトリクロロメチルベンゼンの脱塩素化反応を行ったところ、脱塩素化反応が効率良く進行し、ジクロロスチルベンが得られた。本反応は暗所下や犠牲還元剤であるトリエタノールアミン不在下では進行しなかった。また照射波長を変化させて本触媒反応を行いアクションスペクトルを作製したところ、本触媒の可視光吸収帯と生成物収率が良い相関関係を示し、界面錯体形成に基づく可視光応答性が作動していることが確認された。さらにより優れた複合触媒を作製するために、ビタミンB12の側鎖にドーパミンを化学修飾することで、末端にジヒドロキシベンゼンを有するビタミンB12誘導体を合成し、酸化チタンと複合化させた。本複合触媒を用いても、可視光応答型の脱塩素化反応を効率良く進行することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度の目標であった可視光に応答して触媒作用が発現するビタミンB12-酸化チタン複合触媒の開発に成功し、順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
合成した可視光応答型ビタミンB12-酸化チタン複合触媒を用い、脱塩素化反応以外の様々な物質変換反応への適用を検討する。また光反応の量子収率を決定し、反応の効率化の目安とする。さらに本触媒の耐久性の更なる向上を目指し、酸化チタンとビタミンB12の結合様式を再検討する。また可視光応答化の原理として、他の界面錯体形成を利用して、反応の効率化を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
様々な触媒反応を行うため、それに必要な化学試薬を購入する。また光反応に必要な光反応用ガラス器具を購入する。また本成果を論文発表するために英文添削費、また国内外での学会およびシンポジウムに積極的に参加し、本成果について討議し、さらに関連情報を収集することで本研究をより優れたものにする。
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