平成25年度は、前年度までに得られた結果を受けて、リビングラジカル重合活性を有する環状化合物を用いたビニルモノマーの環拡大重合を環状高分子の大量合成に展開できる可能性を検証すると同時に、マルチブロック環状高分子の合成を行った。NMP (Nitroxide Mediated Polymerization)およびRAFT (Reversible Ad dition/Fragmentation Chain Transfer)重合にそれぞれ適用可能なアルコキシアミンおよびチオカルボニルチオ基を分子鎖内に含む30員環程度の環状化合物をそれぞれ用いて、スチレンおよびメタクリル酸メチルを用いて重合を行った。前年度までの検討では、ラジカル交差反応は避けられず重合の精密な制御は困難であったため、反応初期の生成物の解析を行った。結果として、分子量の精密制御に至らない原因であるラジカル交差反応が初期から起こり、その後に重合が進行すること確認された。このため、重合反応のスケールアップは困難であった。一方で、主生成物は反応点を複数含む環状高分子であり、この特徴を活かし、本手法を環状マルチブロック共重合体の合成へと展開した。RAFT重合を利用した方法ではスチレンに加えてメタクリル酸メチルでも重合が進行する。検討を行った結果、スチレンとメタクリル酸メチルを重合する順番によらず共重合体を得ることができた。またスチレンとメタクリル酸メチルを同時に重合して合成したランダム共重合体も得た。マルチブロック共重合体は、特異な高次構造や集合体形成が期待されるが、鎖状、環状を問わず確立した合成法がなく、本手法は簡便なマルチブロック共重合体の合成法として有用であると考えられる。
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